エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|11「講演会」 2021年10月4日 blancamarron 新料理物語 コンサートのない週は指揮台を降り、大抵オフィスで仕事をすることになっている。木曜のコンサートを終えた直後に、秘書から次の週のスケジュール表が渡される。しかし今回は違っていた。 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|10「宮殿住まい」 2021年9月22日 blancamarron 新料理物語 何を隠そう、僕は宮殿に住んでいる。正式名は文化宮殿。いかにも共産主義時代を髣髴(ほうふつ)とさせるネーミングだが、建てられたのはここがまだハンガリー領だったころだ。 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|9「孤独」 2021年9月6日 blancamarron 新料理物語 友達がいない。別に性格的に大きな問題があるわけではないし、社会性が欠如しているわけでもない。 オーケストラの指揮者は孤独なのだ。朝「おはよー」とあいさつをしてすぐに指揮棒を振 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|8「シチリア」 2021年8月20日 blancamarron 新料理物語 夜のフライト。バルセロナから飛び立った飛行機の窓の下、海にパレルモの街の灯が映る。シチリア島の中心の街である。イタリアで一番好きなところを挙げろといわれたら、迷わずシチリアと答える …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|7「契約書」 2021年8月8日 blancamarron 新料理物語 今、僕はブダペストのドナウ川のほとりのカフェに座っている。 ハンガリーへは十日前に来た。こちらの国立合唱団とオーケストラの演奏会を指揮したのは昨日。薫り高いエスプレッソを飲み …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|6「あるバイオリニスト」 2021年7月26日 blancamarron 新料理物語 一九九六年一月、雪深く大地凍るルーマニア。国立交響楽団の指揮者になって初めての定期演奏会のため、僕は三たびこの地を踏んだ。 (雪のルーマニアを走る) 僕はこの演 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|5「白羽の矢」 2021年7月5日 blancamarron 新料理物語 前回の話が好評だったようなので、その続き。 ルーマニアでの国際コンクールに入賞した半年後、ご褒美に同地でコンサートをすることになった。オーケストラはシビウ交響楽団。トランシル …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|4「コンクール」 2021年6月23日 blancamarron 新料理物語 一九九四年、初めてルーマニアの地を踏んだ。五月初旬のさわやかな日であった。ほのかな花の香り漂う気候とは反対に、私の心の中は穏やかではなかった。私はこの地で行われる国際指揮コンクール …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|3「レパートリー」 2021年6月3日 blancamarron 新料理物語 ルーマニアの音楽家はレパートリーが広い。音楽家のレパートリーとは、自分の持ち曲でいつでもすぐに演奏できる曲ということだ。先日僕がルーマニアのオーケストラの指揮者になってから指揮した …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|2「ドラキュラ」 2021年5月24日 blancamarron 新料理物語 ドラキュラから解放されたい。と言っても美女でもない私がドラキュラに狙われているわけではない。 私の監督するオーケストラは東ヨーロッパのルーマニアの北西部、トランシルバ …