エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|12「ピンクパンサー」 2021年10月23日 blancamarron 新料理物語 今年もルーマニアで映画音楽のコンサートを指揮する。ちょっとした自慢なのだが、この国での映画音楽のコンサートを初めて企画したのは、何を隠そう僕なのだ。 練習風景 革命後、 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|11「講演会」 2021年10月4日 blancamarron 新料理物語 コンサートのない週は指揮台を降り、大抵オフィスで仕事をすることになっている。木曜のコンサートを終えた直後に、秘書から次の週のスケジュール表が渡される。しかし今回は違っていた。 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|10「宮殿住まい」 2021年9月22日 blancamarron 新料理物語 何を隠そう、僕は宮殿に住んでいる。正式名は文化宮殿。いかにも共産主義時代を髣髴(ほうふつ)とさせるネーミングだが、建てられたのはここがまだハンガリー領だったころだ。 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|9「孤独」 2021年9月6日 blancamarron 新料理物語 友達がいない。別に性格的に大きな問題があるわけではないし、社会性が欠如しているわけでもない。 オーケストラの指揮者は孤独なのだ。朝「おはよー」とあいさつをしてすぐに指揮棒を振 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|8「シチリア」 2021年8月20日 blancamarron 新料理物語 夜のフライト。バルセロナから飛び立った飛行機の窓の下、海にパレルモの街の灯が映る。シチリア島の中心の街である。イタリアで一番好きなところを挙げろといわれたら、迷わずシチリアと答える …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|7「契約書」 2021年8月8日 blancamarron 新料理物語 今、僕はブダペストのドナウ川のほとりのカフェに座っている。 ハンガリーへは十日前に来た。こちらの国立合唱団とオーケストラの演奏会を指揮したのは昨日。薫り高いエスプレッソを飲み …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|6「あるバイオリニスト」 2021年7月26日 blancamarron 新料理物語 一九九六年一月、雪深く大地凍るルーマニア。国立交響楽団の指揮者になって初めての定期演奏会のため、僕は三たびこの地を踏んだ。 (雪のルーマニアを走る) 僕はこの演 …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|5「白羽の矢」 2021年7月5日 blancamarron 新料理物語 前回の話が好評だったようなので、その続き。 ルーマニアでの国際コンクールに入賞した半年後、ご褒美に同地でコンサートをすることになった。オーケストラはシビウ交響楽団。トランシル …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|4「コンクール」 2021年6月23日 blancamarron 新料理物語 一九九四年、初めてルーマニアの地を踏んだ。五月初旬のさわやかな日であった。ほのかな花の香り漂う気候とは反対に、私の心の中は穏やかではなかった。私はこの地で行われる国際指揮コンクール …
エッセイ 尾崎晋也のエッセイ|3「レパートリー」 2021年6月3日 blancamarron 新料理物語 ルーマニアの音楽家はレパートリーが広い。音楽家のレパートリーとは、自分の持ち曲でいつでもすぐに演奏できる曲ということだ。先日僕がルーマニアのオーケストラの指揮者になってから指揮した …