今回、灰持酒(あくもちざけ)を使い作った「とんこつ料理」・酒器の黒千代香は霧島焼
灰持酒(あくもちざけ)は基本的に料理用として使うお酒です。
醸造した「もろみ」に木灰を加えて、酒の保存性を高めるという「灰持(あくもち)」という製法を使って醸造した古来の日本の酒なのです。
\今回使った灰持酒(あくもちざけ)です/
Contents
「火持(ひもち)」と「灰持(あくもち)」
「灰持(あくもち)」はわが国に伝わる酒(日本酒)の製造法の一つです。灰を使って酸敗を防ぎ、保存性を保つので「灰持(あくもち)」と呼びます。
これに対して普通の清酒は火入れ殺菌により保存性を持たせるので「火持(ひもち)」と呼ばれるのですよ。
灰持酒(あくもちざけ)は世界でも珍しいお酒
灰で酒の酸を中和することで、結果、元来酸性である酒が、中性か微アルカリ性に変わるという、世界でも他に類を見ない製造法の一つです。なお、もろみに加えられた木灰は、次の工程で完全にとりのぞかれますので、酒の中には残っていませんよ。
アルカリ性の環境下では、成分中の糖分の褐変反応やメイラード反応が早く起来ます。酒の色が短期間に茶褐色に変化するのですね。これが「赤酒」の名の由縁です。
灰持酒には、各種アミノ酸、有機酸、タンパク質等の旨み成分を豊富に含んでいます。料理の味や香りを引き立て、さらに肉を柔らかくしたり魚等の生臭さをとる働き、また香料を材料にしみ込ませ易くし煮くずれを防止する働きがあります。味醂同様多種多様な糖類を含むため、料理に上品な甘みとテリを与えてくれるスグレモノです。
薩摩の灰持酒(あくもちざけ)
鹿児島では、灰持酒(あくもちざけ)を祝の席を華やかに演出してくれる「ハレ」の酒として昔から愛されています。正月のお屠蘇、お神酒、お祝い事の席などの飲用にするのですよ。
ハレとケとは、柳田國男によって見出された、時間論をともなう日本人の伝統的な世界観のひとつ。 民俗学や文化人類学において「ハレとケ」という場合、ハレは儀礼や祭、年中行事などの「非日常」、ケは普段の生活である「日常」を表している。 ハレの場においては、衣食住や振る舞い、言葉遣いなどを、ケとは画然と区別した。
ウィキペディアより
筆者撮影桜島
そして、毎日の料理に旨みとコクをプラスする料理酒としても多く用いられます。「薩摩の酒ずし」「さつますもじ」「さつまあげ」「とんこつ料理」など、灰持酒(あくもちざけ)は鹿児島の郷土料理には欠かせない調味料です。
「とんこつ料理」
「豚骨」とは、豚の骨付きあばら肉を焼いて芋焼酎で炒りつけてこんにゃくや大根などの野菜とともに、味噌と黒砂糖で煮こんでつくる郷土料理である。薩摩武士たちが狩場や戦場などでつくった野外料理がはじまりで、かの西郷隆盛も好物であったといわれている。
鹿児島県といえば、黒豚が有名であるが、これは薩摩藩18代当主、島津家久によって琉球から鹿児島県に移入された豚がルーツである。その後、明治時代にイギリスのバークシャー種と交配させ、改良を進めた。一時、成長の早い白豚の飼育が増え、黒豚の飼育が減った時期もあったが、柔らかく、旨味が強い黒豚の振興を進めることで、現在の“かごしま黒豚”のブランドが確立された。
また、鹿児島県はその温暖な気候から麦味噌の生産も盛んである。鹿児島県の麦味噌は麹の量が多く、塩分が少なめのため、甘みが強い。
「豚骨」には、豚肉と麦味噌、黒砂糖、そして芋焼酎という、鹿児島県ならではの食材がふんだんに盛り込まれているため、今日にいたるまで鹿児島県を代表する郷土料理として親しまれている。
農林水産省のHPより
「酒ずし」
農林水産省のHPより
「酒ずし」の由来
「酒ずし」は、江戸時代に武士の奥方がお花見のときに食べていた料理として始まったようです。
江戸時代の薩摩では、女性は男性の前でお酒を飲むことができませんでした(男尊女卑の影響)。「お花見のときぐらいお酒を飲みたい」という奥方たちの思いが、お酒をお寿司に混ぜた「酒ずし」を誕生させたのですね。「酒ずし」には大量の灰持酒(あくもちざけ)が入っています。奥方たちが酔うためにという理由なんですね。
酒ずしの動画
YouTubeで「酒ずし」を見つけました。
鹿児島に旅行なさるなら、熊襲亭で郷土料理が味わえます。
または、仙巌園の中の「桜華亭」も景色とともに郷土料理が味わえてオススメです!
4種類の灰持酒(あくもちざけ)
灰持酒(あくもちざけ)には4つの種類があるのですよ。これらは産地によって呼び名が変わります。
- 鹿児島県の灰持酒(あくもちざけ)は地酒
- 熊本の灰持酒(あくもちざけ)は赤酒
- 島根県の地伝酒地酒
- 上記の灰持酒(あくもちざけ)を元にさらに発展したものが黒酒
今回使った「灰持酒」(あくもちざけ)
東酒造の黒酒
灰持酒(あくもちざけ)とは、古来日本で造られた日本酒の原点で木灰を投入して保存性を高めた伝統的な醸造酒です。
鹿児島では昔から地酒(じざけ)と呼ばれ、郷土料理の「酒ずし」やさつま揚げの原材料として欠かせません。以前は各家庭で料理酒や祝い酒として使用されていましたが、戦後灰持酒の製造は鹿児島で途絶えてしまいました。
創業者東喜内は地道に研究を重ね、改良を加えながら灰持酒を復活。東酒造の灰持酒は伝統製法を守り、火入れをしない完全生酒で酵素が活きており、お米由来の天然アミノ酸がバランス良く含んでいることが特徴です。
素材そのものの旨みを引き出す機能性を兼ね備えた料理酒として、家庭用だけでなくプロの料理人や食品加工の原材料としても全国で幅広く使われております。東酒造は焼酎だけでなく、食への提案という切り口を兼ね備えた大変ユニークな酒造会社です。
東酒造公式HPより
灰持酒(あくもちざけ)の科学的検証
東酒造が鹿児島大学水産学部とともに化学的検証に取り組んでいます。
ご興味ある方はリンク先をご覧ください。
灰持酒(あくもちざけ)のYouTube
今回の灰持酒((あくもちざけ)を作った東酒造の焼酎
\僕も飲んでる七窪/
この「七窪」は、幻の焼酎と呼ばれている「魔王」の生みの親、前原杜氏によって生み出された芋焼酎です。
前村氏は東酒造で杜氏の修行をしていたそうです。そして、その後白玉醸造に移りプレミアム焼酎「魔王」を生み出し、そして東酒造に再び戻り、この七窪を完成させました。
このような芋焼酎は二度と造れない」と、こぼしたほどの最高傑作!です。
灰持酒(あくもちざけ)を飲んでみると
灰持酒(あくもちざけ)は、とろーっと甘い感じです。深い味わいがあります。甘口のお酒が好きな人は、このままでも飲めそうです。古来、ハレの日に飲んだということがとても興味深く感じます。
灰持酒(あくもちざけ)を使った「とんこつ料理」の作り方
以下の作り方で作りました。そして、黒砂糖50g使うところを、灰持酒(あくもちざけ)を使い、以下に変更しました。どうぞご覧ください。
黒砂糖:40g
灰持酒:20g
食べた感想
以前作った黒砂糖だけ使った「とんこつ料理」のレシピをアレンジして、今回取り上げた灰持酒(あくもちざけ)も入れてみました。
黒砂糖だけで作った「とんこつ料理」に比べると、より深い味わいがあると感じました。甘さもくどくなく、上品な甘みが加えられたと感じます。
まさに、「高級なみりん」感覚で使えると思います。
今回作った「とんこつ料理」によくあいました!
「とんこつ料理」、芋焼酎にぴったしな味です。お酒がすすみますね。
\灰持酒(あくもちざけ)を使いたいなら/
また灰持酒(あくもちざけ)を使って料理してみたいと思います。