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食べ物のことわざ|「灰汁(あく)がある」あくどいは「悪」どいではなかった!

灰汁(あく)の意味

灰汁(あく)とは、洗濯剤や漂白剤に用いられる、灰に水をつけてできた上澄みの水です。食品に含まれる、渋み・苦み・不快臭などの元となる不要成分の総称でもあります。肉などを煮たとき、表面に浮き出る白く濁ったものともいえます。

灰汁(あく)が強い

灰汁(あく)がつよい人、とは、一般に受け入れられにくいような、強い個性がある人のことです。この場合の灰汁(あく)は、人の性質や文章などに、一種のしぶとさやしつこさのあることを指します。

「あいつはずいぶん嫌味な、あくの強い男だが……」と言った使われ方をしますね。

灰汁(あく)が抜ける

ですから、「灰汁(あく)が抜ける」と言えば、人の性質が洗練されて嫌味がなくなる、さっぱりしているという意味になります。

えぐいやつ

俗語ですが、僕の学生時代に「あいつはえぐいやつだな」というような言い方が流行りました。

関西の言葉で「えぐい」が使われると「気色悪い」 という意味があります。この言い方は、ここから来たのかなと思いました。

この場合、不愉快だ、気味が悪いという意味でしょうね。

灰汁(あく)の語源

灰汁(あく)の語源には、「飽く(飽きる)」の「アク」、「あくどし(あくどい)」の「アク」があります。
「灰汁(あく)が強い文章」といった表現や、容姿や性格が洗練される意味で「灰汁(あく)が抜ける」とも使うため、「あくどし」が有力との見方もあるのです。
しかし、このような表現が見られるのは、江戸時代以降なのですね。

灰汁は古くから使われている語で、平安中期の『和妙抄』や、平安末期の『類聚名義抄』にも見られます。
『古今和歌集』では、「アク」が「飽く」の意味で掛詞として使われています。それゆえに、灰汁の語源は「飽く」とする説が妥当であろうと考えられています。

古今和歌集(成立/905〜912)では

古今和歌集編纂のリーダー的存在 紀貫之

紅(くれない)に  染めし心も  たのまれず  人をあくには  うつるてふなり

題しらず 読人しらず

  紅(くれない)に染めたと言ったあなたの心も、今では頼みにはできません、紅も 「灰汁(あく)」で色褪せると言いますから、飽きたら他人に心が移るでしょう、という歌です。  「飽く」に 「灰汁(あく)」を掛けているのですね。
「灰汁(あく)」は灰を水で溶いた時の上澄みの水で、その当時脱色に使われました。

「紅に染めし/飽く」の主語は、自分か相手か微妙なところなんです。 「染めし」と 「人」を強く見れば自分が「飽きる」ということ、「たのまれず」と 「てふ」を強く見れば相手が「飽きる」という意味になります。

江戸時代には

式亭三馬の『浮世風呂』には、「よっぽど灰汁(あく)のぬけた人だから気めへが能(いい)よ」などというせりふが登場しています。この頃になると、現代と同じような使い方をしていますね。

浮世風呂(うきよぶろ)は、式亭三馬が書いた滑稽本である。文化6年(1809年)から文化10年(1813年)にかけて刊行された。内容は4編9冊に分けられ、初編・四編が男湯、二編・三編が女湯となっている。角書をつけると『諢話浮世風呂』(おどけばなしうきよぶろ)となる。当時の庶民の生活を浴場を舞台に描き、落語の話術を取り入れた会話の軽妙さと様々な人々の仕草を詳細に描いた点が特徴である。

ウィキペディアより

「あくどい」はどこから?

「あくどい」は「悪どい」ではなかった!

あくどいは、「程度を超えてどぎつい、やり方がいきすぎてたちが悪い」「色や味がしつこい」という意味で、ものごとが度を超えて不愉快な場合に使います。

悪い状態を意味する言葉なため、卑怯なことを意味する言葉と誤解しがちです。またパソコンやスマホなどで「あくどい」と入力すると「悪どい」と変換されることがありますが、これは間違いです。(僕のMacのコンピュータでも「悪どい」と変換されます)

あくどいの「あく」は食べものの「灰汁」

あくどいの「あく」は、「悪」ではなく、食品の渋みやえぐみなどのもとになる灰汁(あく)からきています。不快なことを意味する言葉として使われるうちに「度を超して品が悪い」「たちが悪い」という意味が加わったとされています。

「灰汁どい」なのです。この「どい」には別段意味がありません。「際どい」などの場合も「どい」が使われますね。

いき過ぎを意味する「くどい」に接頭語の「あ」をつけて、「あ+くどい」ものであるとする説もあります。

英語では

「灰汁(あく)」は foam を使って言い表すことが多いです。foam は「(液体の表面の大量の)泡、あぶく」という意味です。
「あくを取る」の「取る」には skim を使います。skim は「~をすくい取る、~の上澄みをすくう、~をすくいとってきれいにする」という意味です。
英語のレシピ本などでは「あくを取る」は以下のように表現されています。

灰汁(あく)を取る

Skim the foam from the top of the soup.
スープ表面のあくをすくい取る。

Skim the foam from the surface.
表面のあくをすくい取る。

料理での灰汁(あく)抜きとはなにか

料理する上で、「あく」というのは、主として野菜類のもつえぐ味や苦味を指すことばです。「あく抜き」と言えば、調理の途中で材料から溶け出して味がそこなわれるのを防ぐため、それぞれの材料に合う方法で「あく」を取ることです。

「あく」と称するものは実に多種多様で、成分も混合の場合が多く、ごく微量であったり、であることなどから、研究はあまり進んでいないのですよ。一概に好まれない味と言っても、嗜好の問題で、個人によってちがいがあるばかりでなく、食品固有の味などは、かえって個性味として生かしたい場合も多いのです。

色も含まれる

「あく」には広い意味で、食べ物として好ましくない臭いや色なども含まれるのです。

なすやごぼうなどの「あく抜き」と言えば、色を取ることです。あくの成分が空気に触れて酸化することが原因で、野菜の切り口が茶色く変色してしまう(褐変反応)こともあり、見た目をきれいに仕上げるために「あく抜き」を行う場合もあります。水にさらす、塩水にさらす、塩を振る、などの方法があります。