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煮ぬき汁|江戸時代の味噌仕立ての調味料は、 そば、うどんにぴったしだ!

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「煮ぬき汁」(にぬきじる)は、江戸中期以前「醤油味の麺つゆ」が普及する前に、江戸で一般的に食されていた「味噌味の麺つゆ」です。

ということは、江戸時代、もともとは「味噌味の麺つゆ」でお蕎麦を食べていたのですね。

「煮ぬき汁」(にぬきじる)です。味噌の香りがします。

蕎麦つゆとして使ってみました。

今回作った蕎麦(出雲蕎麦)/皿は安藤日出武作 仙山窯鶴紋様志野四つ足角皿/蕎麦猪口は古伊万里(江戸中期)

「煮ぬき汁」(にぬきじる)とは

今は麺つゆというと、醤油味が一般的ですよね。江戸っ子たちはこの「味噌味の麺つゆ」をもてはやしたそうです。そして、こぞって独特の味噌の風味を楽しんでいました。

 

作り方は

作り方については1643年発行の日本最古の料理書「料理物語」に書かれています。

「煮貫」は、味噌五合、水一升五合、かつほ二ふし入せんじ、ふくろに入たれ候、汲返し汲返三辺こしてよし。

「垂れ味噌」と「煮貫(にぬき)」

「垂れ味噌」は八丁味噌と水を混ぜて漉したものです。江戸時代では、日常的に用いられていました。

「煮貫」(にぬき)は垂れ味噌で鰹節を煮出し、うどんや蕎麦を食べる時のつゆの他、万能調味料として使われていたのですよ。この「煮貫」を「めんつゆ」、として食べたようです。

ちなにみ鰹節を使用しない蕎麦つゆは「精進汁」、鰹節を使用した蕎麦つゆは「生臭(なまぐさ)」と呼ばれていました。現在のように鰹出汁を蕎麦つゆに使う店が増えてきたのは18世紀中頃といわれているのですよ。

銀座三河屋の「煮ぬき汁」(にぬきじる)

今回つかったのは、銀座三河屋の「煮ぬき汁」(にぬきじる)です。この蕎麦つゆのおかげで、とても美味しくお蕎麦が食べられました。

銀座三河屋は当時の麺つゆを美味しく再現するため、味噌の名品である『三州八丁味噌』を使用し、かつお風味で仕上げた“味噌味の麺つゆ”を現代に復活させました。コクのある味噌とかつおの旨味、ほんのりとした甘みのバランスがしっかりと麺に絡んで、奥深く、新鮮な味わいを生み出します。日本人の食生活には欠くことのできない麺類(そば・うどん・素麺等)のつけ汁として新鮮な味をお楽しみいただけます。

  • お好みで、ねぎ・胡麻・大葉・みょうがなどを添えていただくと風味が増して一層美味しくお召し上がりいただけます。
  • また、鍋物全般、大根や里芋、鯖の味噌煮、ぬた等にもお使いいただけます。

銀座三河屋の公式HPより

出雲そば

今回、日本3大蕎麦の一つ、出雲そばを使いました。 3大そばの他の二つは、わんこそば、と、戸隠そばです。

色が濃いのが特徴ですね。

出雲の地が蕎麦処となった理由としては、奥出雲地方(出雲国南部=現在の雲南市奥出雲町など)において、寒さに強く収穫までが短い上、痩せ地でも栽培できる蕎麦の栽培が栄えたことがあります。そして、松江藩初代藩主の松平直政信濃国松本藩から国替えとなった際、信濃から蕎麦職人を連れてきたことで蕎麦食が定着したとも言われています。

江戸時代後期になってこの地域の産業・文化を振興した名藩主として「不昧公(ふまいこう)」と呼ばれ親しまれている7代松江藩主の松平治郷が、当時「高貴な人はそばを食べない」とされていたにも拘らず、不昧公はお忍びで夜に屋台の蕎麦(いわゆる夜鷹そば)を食べに行くほどの蕎麦好きだったそうです。

松平治郷

こだわりの食べ方を語っており、茶人としても茶懐石に蕎麦を取り入れその地位向上に一役買ったためと言われているのです。

出雲そばの製法

製法としての特色として、蕎麦粉を作るとき蕎麦の実を皮ごと石臼で挽くため、蕎麦の色は濃く黒く見えます。そして、香りが強いことも特徴ですね。食べ方にも特色があり、「もり」「かけ」といった定番の食べ方よりも、「割子そば」「釜揚げそば」といった独特の食べ方が広まっているのだそうです。

また、もみじおろしや辛味大根の大根おろしを薬味とするのも特徴です。

食器にも凝ってみました

今回、江戸時代の蕎麦つゆということで、蕎麦猪口を、江戸時代の古伊万里にしてみました。

古伊万里とは国内の磁器生産ではトップとも言える有田焼の一種です。主に江戸時代に生産された有田焼や周辺の三川内焼・波佐見焼なども含めた総称として「古伊万里」と呼んでいるのですよ。
有田焼は、17世紀に当時の朝鮮より持ち込まれて以降、様々な様式を生み出してきました。江戸時代になると肥前国を治めていた鍋島藩により職人の保護や育成が行われるようになります。

とりわけ技術の漏洩には神経を尖らせ、職人は一生当地から離れることができなかったとか。そして、藩が専売ですべてを買い上げるなどかなりの力を注いでおり、国内での販売はもちろん海外に向けての交易品として珍重されていました。

古い蕎麦猪口で食べていると、ちょっと江戸時代にトリップしているような気がします。この蕎麦猪口、時代を経てここにあるのだな、と感慨深いものがありました。

実食!

実際には、この銀座三河屋の「煮ぬき汁」(にぬきじる)は2倍濃縮タイプです。煮ぬき汁と水を1:1で割りました。味噌仕立てなので、とろっとしています。

キリッとした醤油ベース、粋な江戸っ子の味という印象とは違います。「煮ぬき汁」(にぬきじる)は、まろやかで素朴です。食べやすく、お蕎麦が美味しく感じました!

豆腐にかけてみた

「煮ぬき汁」(にぬきじる)を豆腐にかけてみました。こちらもなかなか美味しいです。
どちらかというと、こちらの方があっているかもしれません。

以上、「煮ぬき汁」(にぬきじる)の話題でした。

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