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ケバブってなに?|ケバブ・サンドってトルコ料理じゃないの?なぜ世界に広まった?

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2022年秋、トルコにいきました。滞在したのは大好きなイスタンブールです。

トルコの食事といえば、回転するケバブを思い出す人が多いと思います。

回転する肉を長いナイフで切り落とす、アレです。

イスタンブールのブルーモスクの近くで(2022)

ケバブは肉料理じゃない?

ケバブとは、トルコ料理の一種で肉や魚、野菜などを焼いた料理のことです。ケバブは、多くの料理の総称なんですよ。例えばパスタも多くの料理の総称ですね。ケバブは何十種類もあるんですよ!

肉だけじゃない?と思われますよね。そうなんです。肉を焼いたものが有名だから、ついケバブは肉料理って思ってしまいますよね。

スパイスで下味をつけて香ばしく焼き上げたものに食欲をそそられますね。

ケバブの発祥は?

一般にケバブは、遊牧民族や兵士が肉を剣に刺し、火で炙って食べていたことが始まりだと言われています。その後、肉を焼くときには剣の代わりに鉄串が使われるようになりました。

現代ではトルコを中心に中東やアジア、ヨーロッパなと世界中の国々で食べられていますよ。近年、日本でも、ケバブの屋台や移動販売が人気ですよね。都会に行くと必ず見るようになりました。

日本にあるケバブを中心に投稿しているインスタグラムもありますね。

 

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ドネル・ケバブ

ドネル・ケバブはケバブの一種で、日本でもよくみられる回転する肉をナイフで切り落とすものです。

実は、ドネル・ケバブはたくさんあるケバブの一種なんです。ドルネ・ケバブはトルコ語で「回転するケバブ」という意味なのですよ。この名前のとおりですね。塊肉をグルグル回転させながら、外側を焼いていくのがわかります。

イスタンブール 2006年撮影

レストランではお皿に盛り付けて提供されます。しかし、屋台ではサラダと一緒にパンに挟んで出てきます。ケバブ・サンドですね!ファーストフードの一つです。

ドネル・ケバブはなんの肉?

そして、このドネル・ケバブの大きな塊肉は何の肉でしょう?

この回転するケバブ、羊、一頭分と思ってる人多いのではないでしょうか。

これは、鶏肉・牛肉・羊肉などの薄切り肉を重ねたものなのですよ。

トルコはイスラム教徒が多い国なので、豚肉が使われることはありません。僕もよく行くイスタンブールで豚肉料理をみたことないです。ご存知のようにイスラム教の戒律では、豚肉を食べることは禁止されていますね。

ケバブ・サンドはドイツ発祥!?

日本でケバブといえば、ケバブとサラダをピタパンに挟んだ「ケバブ・サンド」がとてもポピュラーです。ケバブサンド以外に、「ギリシャ・サンドイッチ」、「ドネル」、「ギロス」、「シャワルマ」という呼び方もあります。

実はケバブ・サンドはトルコ料理ではないのですよ。ドイツ発祥なのです。

ケバブサンドを作ったと信じられている人

ケバブサンドは、トルコからドイツへ移民してきたカディル·ヌルマン(1933〜2013)が考案したということが広く信じられています。(他にも主張している人はいますが)

カディル・ヌルマン(1933〜2013)

カディル・ヌルマンは、2011年、トルコ・ドネル製造者協会から生涯功労賞を受賞しています。これで、ヌルマンの功績は「ケバブ・サンド」の発明者ということのお墨付きにつながっていきます。

カディル・ヌルマンは1933年、イスタンブールに生まれました。1960年に26歳でトルコからドイツに移住し、1966年にシュトゥットガルトからベルリンに移り住んだのです。

1972年、カディル・ヌルマンは当時の西ベルリンにあるベルリン・ツーロギッシャーガルテン駅にファーストフード(ドネル・ケバブ(回転式ケバブ))の屋台を出します。

彼は、ベルリンの忙しい労働者が携帯できる食事を好むかもしれないと考えたからです。その後、このケバブ・サンドはとても人気のあるファーストフードになるのですね。

ベルリンのヨーロッパ・トルコ・ドネル・メーカー協会会(Association of Turkish Doner Manufacturers in Europe)によれば、今、ドイツには16,000のドネル・ケバブの店があります。まさに、「ドイツの国民的ファーストフード」ですね。ドイツではピタパンにケバブを包むものの他に、トルティーヤで巻いたラップサンドやポテトと一緒にお皿に盛り付けたおつまみ風など、さまざまな食べ方でケバブを楽しんでいるようです。

ドイツの16,000のドネル・ケバブ店のうち、1,000店以上はベルリンにあるのですよ。

このような広がりをみせたケバブ・サンドですが、カディル・ヌルマンは発明の特許を取らず、ドネル・ケバブ(回転式ケバブ)の後の爆発的成功から、特に利益を得なかったのです。フランクフルトの新聞「フランクフルター・ルンドシャウ(rankfurter Rundschau)」との2011年のインタビューで、彼は言っています。

「非常に多くのトルコの人々がドネル・ケバブ(回転式ケバブ)から生活を作ることができることを嬉しく思う」。

魅力的な人ですね。

ベルリンのケバブ・サンドの動画です。

昔からあった回転式ケバブ

トルコの歴史書(Tan, Nail (1990). Kastamonu’nun Ünlü Yemek ve Yiyecek ve İçecekleri. Ankara: Kültür Bakanlığı Yayınları.)によると、今から約150年前にトルコのカスタモヌという街で Hamdi Usta(ハムディ・ウスタ)というシェフがドネルケバップを発明したそうです。

垂直串で焼いた肉を剣でスライスする、おなじみのドネル・ケバブ(回転式ケバブ)は、19世紀半ばからトルコでよく知られていました。

James Robertson ジェームス・ロバートソン(イギリスの写真家) によって1855年に撮られた世界最古と考えられるのドネル・ケバブ(回転式ケバブ)の写真/写真のように、フックにかかった肉は、現在のレストランで見られるものと実によく似ていますね。

写真に写っているのは「’Chef Hamdi’(ハムディ・シェフ)」として知られているカスタモヌ生まれ Hamdi Usta(ハムディ・ウスタ)です。その後、彼はこの調理法を、ドネルシェフの2代目となる「“Şükrü Gülsunar”(シュクルュ・ギュルスナール)」と「“Raif Gülsunar” (ライフ・ギュルスナール)」という2人のシェフに伝えたことが知られています。

その後、ヌルマンの故郷であるイスタンブールでBeyti Güler (ベイティ ギュレール)などのレストラン(1945年にオープン)経営者によって紹介され、世界的に有名な料理となりました。国王、首相、映画スターや有名人にドネルや他のケバブ料理を提供し始めたのです。

1855〜1900 くらいのドネル・ケバブ(回転式ケバブ)の写真

ヌルマン自身も、ドイツでもドネル・ケバブ(回転式ケバブ)の肉をサンドイッチにして売った最初の人物だとは言っていないのです。少なくとも1960年代半ばからイスタンブールではサンドイッチ形式で売られていた形跡があります。

「たぶん他の誰かも、どこか隠れた場所でやっていたが、誰も気づかなかったんだ。ケバブは私を通してよく知られるようになったのです」と言っています(ドイツ語で)

ドイツ最初のドネル・ケバブ

ドネルケバブがドイツで初めて登場したのは、1954年、東ドイツのポツダムという記録があります。Kloster Keller (クロスター・ケラー)というレストランのオーナーが、トルコへの旅行をきっかけに、自分のレストランで作ることにしたのだそうです。

トルコのドネル・ケバブ(回転式ケバブ)の動画

ドイツに移民したトルコ人

ドイツは移民が多い国です。その中で、トルコ移民はドイツ全体で300万人と言われているのですよ。

1960年代に労働者不足に悩んでいたドイツ政府が他国からの働き手を募集し、トルコ、ベトナム、ポーランドなどから多数の労働者を受け入れました。

その後、多くのトルコ人はドイツに残りたいという希望があり、ドイツ政府メルケル首相は滞在の許可を出します。それゆえに、現在でも多くのトルコ系ドイツ人がドイツにいるのです。

世界中で愛されるケバブ・サンド。僕の活動するルーマニアの街でもよく見られます。このケバブ・サンドはドイツ発祥なのですね!

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