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ツイカ|香り高いルーマニアの伝統蒸留酒|世界的に有名なツイカ蒸留所ゼテアと農家のツイカ

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ツイカというお酒、ご存知ですか。

ツイカは、ルーマニアの代表的な蒸留酒です。ルーマニア人に「ルーマニアの家庭に必ずあるものは何ですか?」と聞くと、おそらく大多数の人がツイカと答えると思います。ツイカはアルコール度数の強いお酒です。そして、ツイカはEU(欧州連合)に「伝統蒸留酒」として認められているルーマニアの国民酒なのです。

これはフルーツブランデーとも言えます。ルーマニアの領土における最初のブランデー蒸留の文献的証拠は、1570年のTurț(サトゥ=マーレ県)での製造にさかのぼります。


このサトゥ=マーレ県という地域は僕がよく行くところでもあります。

ツイカはルーマニアのレストランにも必ずあるお酒なんですよ。

ツイカとは

ツイカ(Țuică、ルーマニア語発音: [ˈt͡sujkə]; tuica、tzuika、tsuika、tsuica または tzuica などとも綴る)は、プラムから作られるルーマニアの伝統的な蒸留酒で、アルコール度数は約24-65%(通常は40-55%)の強い酒である。

ウィキペディアより

ツイカの飲み方

ツイカは食前酒です。アルコール度数が高いのですが、ストレートで少量を一気に飲みます。これが一般的な飲み方なのですよ。食事の消化に良いとされています。

アルコール度数が比較的に高いため、1日50ml以下が適量です。(実際、ガブ飲みは不可能!)

ツイカはお酒に弱い人にはすすめられません。僕がよく飲むツイカはアルコール度数50%くらいのものです。僕はお酒をよく飲む方ですが、それでも最初にルーマニアに来て飲んだ時には「消防局に電話してくれ!喉が焼けてるって!」とジョーク言ってました。喉越しにカーッと来るイメージですね。でも、今はこのアルコール度数にも慣れて「うんうん、なかなかうまいな」と感じるようになりました。
そしてガブ飲みは禁物です。ルーマニアに歌舞伎役者が日本文化のワークショップの一環として来たことがあって、公演後に一緒にレストランに行きました。大体僕の知っている歌舞伎役者の人ってお酒強いんです。「ツイカ、追加!」ってダジャレ言ってけっこうな量飲んでいてちょっと心配になりました。案の定、次の日は頭が痛いなどと元気なかったです。ツイカを甘くみてはいけません。

改めて書きますが、、、少量飲む食前酒です。

ツイカの紹介には「ブランデーのようにロックで飲まれることもある」と書いてあるものもあります。しかし、現地ではあまり見たことがありません。水割りやお湯割にはしませんね。

民間では、食欲が増し健康にいいとされているのですよ。ワインやシャンパンの代わりにツイカで乾杯するのも習慣です。そして、ゲストを歓迎するものとしてツイカが好まれています。

「ノロック!」(ルーマニア語で乾杯)と、まずはツイカで乾杯。あなたもルーマニア人の仲間です!

 

ルーマニアには多くの伝統があります。

その中でも最も大切なもののひとつが、友人や家族と食事を共にすることです。
ツイカを飲むことで、食欲が増し、テーブルに食べ物を残さず、みんなが楽しい時間を過ごすことが保証されると言われています。実際に友人の家に招かれると、「驚くほどの」量の食事が振舞われますよ。(特に田舎の村)

ツイカの材料

ツイカの材料はプラムです。ツイカはプラムの発酵と蒸溜によって作られます。
ツイカの材料で、認められているのは//プラムだけ//なんですよ。他の果実から作られた飲料はツイカと認められていないのです。もちろん、補糖や補酸も禁止です。100%ナチュラルなお酒なんです。

ルーマニアはEU(欧州連合)の中でも最大のプラム生産国です。ルーマニアの農業省によると、作付け面積は65.000ヘクタール(東京ドーム 13,902個分。その生産量の80%がツイカを作るために使われています。

ツイカの世界的に有名な蒸留所ゼテア(ZETEA)に行った

ルーマニア北西部には、100年の歴史を持つユニークな蒸留所があります。それは、メディエシュ・アウリット村にある「ゼテア」(ZETEA)です。

僕は2022年秋に、サトゥ=マーレ市のディヌ・リパッティ交響楽団を指揮しました。
メディエシュ・アウリット村はサトゥ=マーレから近かったので、そこにある蒸留所「ゼテア」(ZETEA)を訪れました。

コンサートの模様

ツイカで有名な「ゼテア」(ZETEA) に到着!

ツイカで有名な蒸留所「ゼテア」(ZETEA)を訪問した日は、あいにく雨で村の道はぬかるんでいました。しかし、ツイカ作りの世界的有名なところに行くので悪天候であってもワクワクしました。

古い建物ですね。伝統ある蒸留所らしい建物です。その建物の近くに行くと、さっそくお酒の香りがしてきました。

建物の中に入ると、社長のシルヴィウ・ゼテアさんが待っていてくれました。事前にルーマニア人の友人を介して僕の訪問を伝えてありました。

ゼテアさんはとても気さくな人です。

ツイカの蒸留所に入った

ツイカの蒸留所にゼテアさんに連れられて入りました。意外に小さなところで、「ここが世界的なツイカの工場なのか」とちょっと驚きました。大変古い蒸留所(100年以上)です。

ゼテアの古い看板

ゼテア家は、父から子へとレシピと技術を受け継ぎながら、事業を続けているそうです。今のゼテアさんで3代目です。

ツイカ用のプラム発酵は木の樽またはステンレスタンクで行わなければいけません(他の資材は禁止!)。
そして、蒸溜は銅のボイラー又は国が認めた蒸溜設備で行わなければならないのだそうです。

まさしく銅のボイラーで蒸留しています。これはルーマニア語でカザン(Cazan)というのですよ。ここの1つのカザンで1回、30リットル蒸留できます。

蒸留の熱源は木材を焼いています。

1回めの蒸留したツイカ出てきています。これで、ツイカの度数は28%くらいです。

ゼテアさんのところでは、3回蒸留します。そしてアルコール度数を調整して50%のものに完成させるのだそうです。

この部屋中にプラムのお酒、ツイカのいい香りがします。

ツイカの樽

ツイカの貯蔵庫に行ってみました。ゼテアさんの説明によると、これらの樽は80年以上前のものだそうです。桑の木でできた熟成用のものです。

ツイカを試飲した

ゼテアさんの事務所に行き、様々な蒸留酒を見せてもらいました。そして、ゼテアさんの作った代表的なツイカを試飲しました。

一口飲んだだけで、口の中にプラムのいい香りが広がります。そして、とてもまろやかな味わいでした。さすがです!ゼテアさんのツイカは2001年ベルギーの品評会で銀賞をとっています。

ゼテアさんはとても社交的な方です。余談ですが、ゼテアさんはここメディエシュ・アウリット村の村長をつとめていたこともあるのですよ。

ツイカだけではなく、プラム以外のフルーツを使ったお酒もありました。これらはツイカでなくパリンカと呼ばれます。前述のように、ツイカと呼べるものはプラムが原材料のものだけです。

ゼテアさんの先代、お父さんの肖像画もありました。

ゼテアさんの会社

ゼテアさんはこの蒸溜所を1989年のルーマニア民主化の時にいち早く民営会社としてスタートさせました。上質なツイカを海外に知ってもらいたいと思ったからです。

しかし、周囲の反応はかなり冷たかったみたいです。ルーマニア北西部の村には自家製ツイカがあふれていたからです。「誰がお金を出してまでツイカを買うんだい?」と言われたのだそうですよ。それが、今では年間100万ユーロの売り上げがあり、メディエシュ・アウリット村は「ゼテアの村」として有名になりました。

ツイカをゼテアさんのところで買った

ツイカの蒸留所に来たのですから、もちろんツイカを買いましたよ。

従業員にゼテアさんが指示して、代表的なツイカを選んでもらいました。

ゼテアのホームページ

ゼテアさんのツイカを日本に持って帰って飲んだ!

帰国して、ゼテアさんのところで買ったツイカを飲みました。まず、箱を開封して、ボトルを出しました。

大変美しく重厚なボトルにツイカが入っています。箱にはルーマニアの国旗の色の帯がしてありますね。さてどんな味でしょうか。


まずツイカの香りを味わいます。プラムの香りがとてもいい感じです。

口に含むと、甘く感じます。アルコール度数が高いはずですが樽熟成の成果でしょうか、まろやかな口当たりです。これはもう芸術の域に達している!と感じました。

ツイカを別の日に農家から買った

サトゥ=マーレ市から一番近い大きな街はバイア=マーレ市です。そのバイア=マーレ市から車で30〜40分の村バレア=キョアルルイ(Valea Chioarului)という村があります。そこではプラムをたくさん栽培しているのですよ。もちろん村ではツイカを作っています。

バレア=キョアルルイにはよく訪れます。訪れると必ず決まった一軒の農家からツイカを買っているのですよ。
ルーマニアの村に行くと、家々の門の外にテーブルが置いてあり、ボトルが置いてあります。(中身が入っていることもあり、入っていないこともあります)それは、ここでツイカもしくは、ワインを作っているという印でもあるのです。
過去にバレア=キョアルルイの中で、何軒か農家を周りツイカを試飲しました。そして、お気に入りの農家を見つけたわけです。

これがその農家の写真です。毎年のようにここでツイカを買っているのでもう顔なじみです。(この農家のツイカはアルコール度数56%くらいです)

ツイカは伝統的な方法で作られ、現在は自家消費用に作ることも認められています。
過去には自家消費用に家庭で作るのは違法とされていたのです。しかし、政府はツイカがルーマニアの伝統に根ざしたものであることを踏まえ、自家消費用に作ることを容認するようになったので、このように村でもツイカを作れるようになりました。

村のツイカはとても素朴な味です。今回買ったツイカはあまり熟成していない若いものでした。味というとプラムの香りがしっかり感じられて、しかもスッキリしたものでした。

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後日談

ゼテアさんと初めて会った翌年、日本から日本酒をゼテアさんのところに持って行きました。

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