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昔から食べられてきたカツオ
日本人は昔から魚をたくさん食べてきており、中でも、カツオは刺身、タタキはもちろんの事、カツオ節などの保存食としても食べられてきた魚です。
江戸では初鰹に庶民が熱狂したようです。それは、「初物を食べると75日長生きする」と信じられていたこと、さらには人よりも先に食べたと自慢したい江戸っ子の見栄がそうさせたようですよ。
近年、魚がもつ様々な栄養素の効果が発見されました。食材としての魚の価値は再認識されつつあります。欧米などでも、魚食は注目されているようですね。
魚を摂取する上で効果が期待できるものの代表が、DHA(ドコサヘキサエン酸)です。DHA(ドコサヘキサエン酸)は人間の脳の脂質中にも多く含まれており、記憶や学習といった脳の機能に重要な役割を果たしていると言われています。
DHAとは
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、青魚に多く含まれている不飽和脂肪酸で、体内ではEPA(エイコサペンタエン酸)からつくられる成分です。冷たい海に住んでいる魚の脂で、低温状態においても固まらない性質を持っています。
DHA発見の歴史
グリーンランドに住むイヌイットは、動脈硬化や脳梗塞などの生活習慣病、また心筋梗塞などによる死亡率が少ないことがわかりました。そして、イヌイットの食生活に注目が集まったのです。
イヌイットは主に脂肪分の多いアザラシの肉や魚を食べて生活してきました。グリーンランドでは冬の最低気温が約-60℃にもなります。当然、野菜の栽培が不可能だから、こういう食事になったのです。
デンマーク人とイヌイットの血中脂質の比較
1972年、デンマークの2人の研究者はイヌイットの血中脂質をデンマーク人の血中脂質と比較しました。その結果、デンマーク人よりもイヌイットの血中脂質や血中コレステロール、血中トリグリセリドなどが低かったのです。そして、冠動脈心疾患などの循環器系疾患の罹患率も低いという結果も報告されたのですよ。
デンマーク人の急性心筋梗塞での死亡原因が40%であるのに対して、61歳以上のイヌイットの罹患率は約3%と驚くほどの少なさなんです。
この原因はなんでしょうか。イヌイットの食事に多く含まれているDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸が、血中脂質を減らし、冠動脈心疾患などの循環器系疾患を防いでいるからだと考えられているのです。
医薬品の開発
そこから、DHAやEPAのさらなる研究が始まりました。1990年、高純度EPAエチルエステル(純度90%)が、高脂血症などを適応症とした医薬品として使用され始めたのですよ。
医薬品として認められるためには、96.5%以上の純度が求められるため、トリグリセリドに結合したEPAを、一旦分解してエチルエステル化し、イコサペント酸(EPA)として高純度化する必要があります。日本水産がこの技術を開発し、一次蒸留、高度精製することで、ダイオキシン、有機水銀類、pc-bといった環境有害物質を限りなく除去することが可能となり、現在では純度96.5%以上まで高めることができているのだそうです。
詳しくはニッスイのHPをご覧ください。
また、同年、まぐろやカツオの眼窩脂肪(がんかしぼう)に高濃度のDHAが発見されています。以来、DHAの健康維持効果への期待が高まり、研究・開発は続けられています。
これからが期待できますね。
カブト煮
カブト煮などで食べる目の裏のゼリー状の部分(眼窩脂肪/がんかしぼう)には、多くのDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれています。枕崎で昔から食べられてきた「カツオのビンタ(頭)煮」などはDHAを摂取できる素晴らしい料理法だったわけですね。
カツオのわら焼き体験を鹿児島・枕崎でしました。その時に、「カツオのタタキ」とともに「カツオのビンタ(頭)煮」も食べた記事を投稿しましたので、リンク先をご覧くださると嬉しいです。
目の周り食べられますか?
僕はこの魚の目の周りを食べるのが大好きです。外国人の中には、頭がついているというだけで、魚の尾頭つきを食べられない人がいます。そんな人から見たら、目を食べていう様子はグロテスクでしょうね。
枕崎お魚センターで食べることができるカツオのビンタ
またカツオは皮と身の間にも多くの脂肪を蓄えています。ここにもDHAが含まれています。皮ごと食べるタタキ、そして皮ごと加工するカツオ節もDHAをたくさん含む素晴らしいものなのです。
エラスチン
最近、コラーゲンやエラスチンが話題によくあがります。皮膚の中ではコラーゲン線維を束ねる形でエラスチンが存在し、硬くなる皮膚を柔軟にするとともに、皮膚のシワ形成を予防します。
ですから、コラーゲンと一緒にエラスチンをあわせて摂取すると効果があると考えられています。
コラーゲンは体内でつくり出すことができるものだそうです。しかし、エラスチンは基本的には再生せず、出生前から赤ちゃんの時期までに生成され、あとは年齢とともに壊れていくだけなのです。
近年、魚の心臓部分についている動脈球に、ものすごくたくさんのエラスチンがあることがわかりました
写真は枕崎で「カツオのわら焼き体験」の際、卸したカツオから出てきた心臓
枕崎では昔からカツオの心臓を多くの料理に使ってきたのですよ。カツオを大量に取り扱う地域ならではのものですね。これは自然にエラスチンが摂れることになりますね。
食べ方その1(血合いも食べる)
カツオの身に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は体のいらない塩分を排出する働きがあります。コレステロールや脂肪を減らす働きもするのだそうです。そして、タウリンには高血圧などの生活習慣の予防や肝細胞の再生促進作用があります。(タウリンは牡蠣、蛸、烏賊に多く含まれています)
カツオの血合いには、このタウリン、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)など、飽和脂肪酸がたくさん含まれています。
カツオの有名な栄養素が「鉄分」です。赤身部分・血合い部分ともに多く含んでいます。
鉄分には「ヘム鉄」「非ヘム鉄」の二種類があり、カツオには前者の「ヘム鉄」が含まれています。この鉄分は非常に吸収率がよく、非ヘム鉄の2~5%という低い値に対し、ヘム鉄は15~25%という吸収率を誇っています。貧血予防や解消に効くと言われているのは納得ですね。
食べ方その2(漬けにする)
カツオは臭みが出やすい魚です。「カツオを食べよう!」と思っても、この臭みが気になる方もいると思います。醤油に漬けることで、魚特有の臭みが和らぎ、菌が繁殖しづらくなりますよ。
カツオの漬けの方法は、またあらためてレシピを投稿しようと思います。
以上、カツオの栄養の話題でした。