日本の祝い事では欠かせない魚が鯛ですね。鯛の本場は日本と思っている人が多いと思います。
はっきり言います。それは「誤解」です。鯛の本場は北アフリカ沿岸なのです。
そして鯛のルーツも北アフリカ沿岸にあります。僕は鯛をよく釣りますが、鯛は想像を越えた時間を経てアフリカから日本に来たと思うと、感慨深いです。
リンク先に日本での鯛の話題があります。よろしければご覧ください。
Contents
鯛の故郷はアフリカ
今から数千年前から一億年前、タイ科の祖先が現れたのは、現在の地中海を中心とするテチス海なのです。
テチス海とは古地中海のことです。
現在の地中海の位置と比べると大体想像できますね。
その古い地中海から各地に進化し、移動して行ったのです。
赤い鯛は元来温帯の魚です。現在の分布で言うと、熱帯の海が苦手なために、それらの海で分布が断ち切られています。熱帯の海とは、紅海、アラビア海、インド洋、南太平洋などです。
今でもアフリカでは
サハラ沖、つまり北アフリカ沿岸のトロール網には、一網にたくさんの種類の赤い鯛が混ざり合って入ってくることが多いです。多いときには10種類以上も獲れるようです。
トロール網
トロール網は両側に袖網を付けた三角形の袋網で、長さはおよそ25メートル程度のものをいう。この網を船で曳いて航行することで大量に魚を捕獲できる。
そして、アフリカ南部のケープタウンからアフリカ東海岸までには約20種類の赤い鯛がいます。
キシマダイ、アサヒダイ、ニシキダイ、などが日本に輸入されています。
日本はタイ科の魚の終着駅
東シナ海から日本海近海の北半球にいるのは、彼らの故郷アフリカから遠く隔離されているような状態なのです。アフリカから移動して、住み着いた終着駅的存在が日本なのですね。北アフリカ沿岸から極東の地へ長旅の末、日本の近海に定着したのです。
タイ科の魚が北アフリカ沿岸から進化しつつ広がっていった様子です
日本沿岸にはマダイ亜科、キダイ亜科、そしてヘダイ亜科が移動していますね。
オセアニアとアメリカ東海岸の鯛の分布は大陸移動説で説明できる
大陸移動説のアルフレート・ロータル・ヴェーゲナーの説明から容易に想像できます。
上段、左から右、そして下段も同様に大陸が移動していきます。古地中海から確かにアメリカ東海岸はくっついていてその後に分離。その隙間が大西洋でオセアニアに通じますね。なるほど。
南北アメリカの西海岸にはタイ科の魚は、大西洋から回った一部の一種を除き「いない」のです。アフリカ北沿岸からアメリカ西海岸はかなり遠く、そしてアメリカ大陸を回って行かないといけないからですね。
そうか、サンフランシスコ湾で釣っても鯛は釣れないんだ。
鯛を釣った話題はリンク先にあります。どうぞこちらもご覧ください。
離れたところにいる類縁の近い鯛
アフリカから流れ着いた場所が遠い鯛は、長い間隔離されている状態でした。それゆえに、それらの鯛は別種となった可能性が強いです。
ニュージーランドやオーストラリアのゴウシュウマダイ
日本の真鯛ととてもよく似ています。縁も近いです。実際にmtDNA(ミトコンドリアDNA)の研究においては、ゴウシュウマダイと真鯛は、同種のうちの異なる亜種であるとしている報告があります。
真鯛
我らが真鯛。日本では「おめでたい」ときに出される代表的なものですね。鯛の釣りの話題はリンク先に書いていますので、ぜひ、ご覧ください。
大西洋のヨーロッパマダイ
これも日本の真鯛と姿形がそっくりですね。縁類も近いです。このヨーロッパマダイ、ゴウシュウマダイ、日本の真鯛の3種は同亜科の同属です。ヨーロッパマダイは地中海から米国まで大西洋に広く分布しています。通常40~50センチの大きさに成長しますが、なかには90センチを越えるものもあるみたいですよ。
分類は基本的に以下のようになります。参考にしてください。
界―門―綱―目―科―属―種
輸入物の鯛
このように北アフリカ沿岸から各地に移動していった鯛は日本に輸入されることが多いです。冷凍技術が良くなって、私たちの食卓に輸入物の鯛が乗ることも少なくありません。鯛だから、「日本のもの」と思い込んでいる人も多いでしょうね。
そして、この輸入元を見てもわかるように、鯛は日本独自のものではありません。アフリカ北沿岸から世界に移動していったんですね。
かつて祝儀ものとして焼き鯛が結婚式などにたくさん使われました。「日本にこんなにたくさんの鯛があるのだろうか」、と疑問に思ったことがよくありました。
あなたがかつて食べたその祝儀用の鯛、鯛の本番アフリカからのものだったかもしれませんよ。
調べてみると、まるで日本野球界に来た大リーグからの助っ人選手のように輸入物が活躍していることがわかり驚きました。
ゴウシュウマダイ
学名:パグルス・アウラツス
マダイ亜科
別名:ニュージーマダイ
写真は上記を参照してください。
ニュージーランドマダイともいいます。真鯛に最も近縁です。姿も真鯛にとてもよく似ています。分布はオーストラリア南西部からニュージーランド。ただし、老成した雄は、前額部がコブ状に突き出します。体も真鯛に似て大きくなります。体長1メートル、体重20キロを超えるものもあるらしいです。よく輸入されるのは、30〜50センチのものです。南洋トロール漁業で、最も早く開発された鯛です。1962年には1400トンも輸入されたのですよ。かつては、遠洋漁業の花型でした。その後、200カイリ規制のために日本魚業による漁獲がなくなりました。そして、輸入されるようになったのです。1971年くらいから、それまでの冷凍の他にニュージーランド近海のものが氷蔵鮮魚の状態で日本に空輸されるようになりました。南半球の鯛なので、日本の真鯛が産卵を終わって味が落ちる時期に、ニュージーランド方面では旬が始まって美味となります。そのためになおさら珍重されますね。
パーティや祝儀の焼き鯛に使われています。刺身としても高級料亭で使われているようです。真鯛より身が柔らかく味も落ちるみたいですが、天然物としての淡白な旨味があるので美味しいという声も聞かれます。
ヨーロッパマダイ
学名:パグルス・パグルス
マダイ亜科
イギリス以南、ヨーロッパからアフリカまでの大西洋沿岸と南北アメリカ大西洋側の温帯沿岸でとれます。水深20メートルから250メートルに分布しています。
ウロコが大きいです。日本産の真鯛に非常によく似ており、よく知る人でないと判別するのは難しいみたいです。尾ビレはピンク。末淵が白いです(日本の真鯛は黒い)。近年はスペイン、アルゼンチンからも冷凍物がたくさん日本に輸入されています。
乱獲のため漁獲量が激減したことがあります。そのために地中海では養殖が始まり、北アメリカでも養殖が検討されています。
キシマダイ
学名:プテロギムヌス・ラニアリウス
プテロギムヌス亜科
南アフリカ沿岸の浅所から水深150メートルに広く分布しています。日本のキダイに似ています。
体側には黄色と青緑色の縦縞が5~6本があるようですね。真鯛に近いですが、やや鼻先が尖っています。岩礁地帯に群れて住みます。成長は遅く、成熟まで4~5年かかり、16歳まで生きた記録があります。アフリカ南部では重要な食用魚で、延縄やトロール(メルルーサの混獲)で漁獲されます。1960年代には日本と台湾のトロール船のこの魚の漁獲量が合わせて年間1万トンを越えたこともありました。しかし、200カイリ経済水域が実施された1976年以降、激減しています。
一時期、真鯛の代用品として、祝儀ものの仕出しなどにさかんに使われました。
アサヒダイ
学名:パゲルス・ペロッティ
プテロギムヌス亜科
商品名はサクラダイともいいます。北西アフリカの水深250メートルに分布しています。
タイ類としては体高が小さいです。体長は20センチほどのものがよく輸入されます。1960年~70年代にかけて、日本のトロール船が漁獲したものが大量に搬入され、マダイの代替品として日本では婚礼用の焼き鯛になどに使われていました。その後の日本船のアフリカ沿岸からの撤退、結婚式における需要減などの理由により、輸入量は大幅に減少しています。
ニシキダイ
学名:パゲルス・エリスルス
プテロギムヌス亜科
バルト海でとれる最も北方に分布するタイです。
スカンジナビアから地中海、アフリカ西岸まで広く分布しています。大西洋沿岸サハラ漁場で、アサヒダイと混ざって獲れるようです。ほっそりとして、小型の鯛です。用途はキシマダイやアサヒダイと同じです。
アンゴラレンコ
学名:デンテックス・アンゴレンシス
キダイ亜科
アフリカ西岸に分布しています。日本のキダイに似ています。
生まれた時はほとんどの個体がメスで、体長20センチ前後になるとオスに性転換をおこないます。日本の鯛とちがって、ウロコがはがれやすいです。1960年代には日本のトロール船による水揚げが多かっのですが、1976年の200カイリ経済水域実施後、激減しました。
かつては、「鯛でんぶ」「鯛そぼろ」の材料によく使われました。祝儀用に焼き鯛として使われることも多いようです。
以上、鯛のルーツと世界各地のタイ科の魚に関する話題でした。