内田牧場見学・内田正美さんと会った
はじめまして。尾崎と申します。よろしくお願いします。
内田といいます。この牧場を経営しています。よろしくお願いします。
ここは神戸ビーフつまり、神戸牛になる牛を育てていると聞きました。
そうですね。神戸牛の元になる但馬牛を育てています。最近は、地方名をつけた牛が多いですね。いわゆるブランド牛が増えてきた感があります。米沢牛、仙台牛などが有名ですね。
早速ですが、この牧場の歴史をお教えください。いつからやっておられるのですか。
神戸ビーフ(神戸牛)とは
兵庫県産牛は、と畜され全頭、BSEの検査をし、合格牛は枝肉市場で兵庫県産(但馬牛)として売買されます。
その中でも、神戸ビーフ(神戸牛)には、「のじぎく判」と呼ばれる判が押されているのご存知ですか。
BSEとは
牛海綿状脳症(BSE)は、牛の病気の一つで、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動、運動失調などを示し、死亡するとされています。
神戸ビーフ(神戸牛)
但馬牛の中でも、肉質等級(霜降りの割り合いであるBMS 6 以上の肉質のもの)などの格付基準に合格したものが「神戸ビーフ」となります。そして、神戸ビーフの証「菊の判」が押されるのです。
「神戸牛という牛」がいると思ってませんか?
「神戸牛」という牛がいるわけではないのですね。上記のように、兵庫県北部の但馬牛の中から、厳選した良質の肉を「神戸ビーフ」、または「神戸牛」と呼ぶのです。
子牛がいた!
そうなんですね。さっそく牧舎を見学させてください。あそこにいるちっちゃい子牛は何歳なのですか。
そうなんですね。もっと年齢がたっていると思いました。
あれで約25キロくらいで産まれています。但馬牛は他の牛よりもこれでも小ぶりなのですよ。鹿児島の黒牛など、30キロくらいで生まれると思います。
1ヶ月の牛
あそこの2頭の子牛はミルク飲んでますね!何歳くらいですか?
そうです。うちには二人、女性のスタッフがいます。最近、会社組織にしたのですよ。
あのミルクのやり方はすごいですね。片手で2つミルクの容器を持ってあげているのですね。二刀流ですね!
あれは、男性でもなかなかできない技なんですよ。一本、1.2リットルあるんです。
片手で、合計2.4リットル持っているのですね。すごい!あれはお母さん牛のミルクですか。
いいえ、あれは、母牛のミルクだけでは足りないので、別に購入したものです。
川本さんの話
川本さんは、どのようなきっかけでここで働くようになったのですか。
農業高校を卒業しました。そして、この仕事が好きなので、内田牧場の募集を見てここにきました。
兵庫県立農業高等学校
農業と他がジャンル分けされています。農業科以外に、農業環境工学科、園芸科、食品科学科の他に、全国でも珍しい動物化学科や、大学並みの研究機材が揃う生物工学科など、高レベルの学習ができるようですね。目的意識が高い生徒が集まっている感じです。
- 食品科学科 C (FoodChemistryから)
- 食品環境調査類型
- 食品製造流通類型
- 食品製造機器類型
- 農業環境工学科 E (Engineeringから)
- 造園科 G (Gardeningから)
- 環境マネジメント類型
- 都市プランニング類型
- 造園スペシャリスト類型
- 生物工学科 B (Biotechnologyから)
牛も風邪をひく!?
農業高校のご卒業なんですね。 この時期、大事なこと、または大変なことはなんですか。
え!?牛も風邪をひくのですか? それは知らなかったです。
牛も人間と一緒で風邪をひくのですよ。平熱は、38.5度くらいです。しかし、風邪をひくと熱が上がって40度近くまでなります。体調が悪くなると、下痢もするのですよ。
あの生まれてまもない牛は服を着せてもらってますね。
大変な時期は?
そうなんですね。意外と時間帯が会社勤めに近いのですね。今は、忙しい時期ですか。
今は忙しい時期です。秋から収穫が終わった藁を獲りに行くのが忙しいです。そして、子牛が生まれると忙しいですね。
そうですね、この壁をおろして風が来ないようにします。牛は、寒さには強いのですが、風には弱いのですよ。だから、風がピューピュー入らないようにしています。
神戸ビーフ(神戸牛)について
内田さん、神戸ビーフの特徴を簡単にお教えください。
そうですね、神戸ビーフは但馬牛を元にしています。その最高級の肉です。肉質は柔らかく、脂肪分は高いです。味が濃い特徴があります。香りも違います。ちなみに、私は、牛肉を食べると、神戸ビーフ(神戸牛)だけは、すぐにわかりますよ。スーパーで安く売っている牛肉は、交雑種が多く、味が薄いですね。
但馬牛の特徴
但馬牛は南九州などの黒毛和牛と比べると、小さいのですよ。700キロくらいの重さですね。
全体でこの牛舎にはどのくらいの牛がいるのでしょうか。
個体の管理
そうです。あれは耳標(じひょう)と言います。個体番号が書いてあり、産地などしっかり表示確認できるのですよ。
そうです。牛の鼻には鼻紋というものがついています。つまり、人間の指紋と同じようなもので、一頭に一つしか存在しないものなのですよ。その鼻紋を登録して個体を管理しています。流通では、肉屋にもこの情報がいくことになります。
以前、神戸ビーフ(神戸牛)の偽物が出たこともあり、私たちは信頼を保つためにもしっかり管理しているのですよ。
牧場で大変なこと
一番大変なことは出産です。予兆がなく、早産の場合で、夜の場合はとても大変です。私たちは寝ているので、朝起きると死んでいるということがありました。早産で小さく生まれると弱いので、そこも大変なところです。20キロ以内の赤ちゃんはその後の成長にも問題になります。
足を踏まれると痛い!です。700キロありますからね。角でつかれるかもしれませんしね。うちの妻は入院したこともあるんですよ。
それは痛そうですね!そういうこと、想像できませんでした。どのくらいで、成牛と考えたらいいですか。
3年で成牛と考えられますが、出荷するのは33ヶ月経ってからなんですよ。
そろそろ夕暮れになりました。内田さん、今回は本当にありがとうございました。
西の方をご覧ください。ここはとても夕日が美しいのですよ。いつもこの夕日には癒されます。それでは、気をつけてお帰りください。
後日談
この内田牧場の訪問を実現できたのは、鹿児島中央高等学校の同級生・早渕彰くんの協力のおかげです。
牧草関係の仕事(乾牧草 直輸入販売業者・株式会社藤井商店)に従事していて、僕が食肉関係の取材をしたいと申し出たら、色々と考えてくれました。感謝です!
淡路島で早渕彰くんに45年ぶりに再会しました。
内田牧場「内田正美」さんと
内田さんは、とても優しい方でした。外部者の訪問は牛たちに対して気を使うと思うのですが、僕の質問に丁寧に答えてくださいました。
川本さんは、大変聡明な女性という印象を受けました。農業高校に入ったのも高い目的意識を持ってのことだと思います。質問に対しても明確に答えてくださいました。
以上、内田牧場を訪れた話でした。関係者のみなさん、心から感謝します。
最後に内田牧場が育てた牛からできた「神戸ビーフ(神戸牛)」を紹介します。