2022年春、紀伊半島をドライブ旅行しました。その時に各地の情報を調べたところ、とても珍しい食材があると知りました。「マンボウ」です。
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マンボウの不思議な形
マンボウは3メートル、重さ2トンを超える大きな魚です。独特のその姿から、水族館でも人気の魚ですね。
マンボウは楕円形で側扁(左右に平たい)の魚です。尾鰭(おびれ)のように見えるのは舵鰭(かじびれ)という独特のものです。舵鰭(かじびれ)は背鰭と臀鰭の一部が変形したものです。
多くの魚には尾鰭を支える骨格があります。しかし、マンボウの舵鰭を解剖すると背鰭と臀鰭を支える骨格とよく似た骨が出てくるのだそうです。
ウィーン国立自然史博物館より
マンボウはフグ目マンボウ科マンボウ属
マンボウはフグ目の中でもフグ科やハリセンボン科に似た特徴をもっているものです。
マンボウ属やヤリマンボウ属の魚はとても大きくなり、成魚になると全長3.3メートル、体重2トン以上になるのですよ。
マンボウ科には何種類いるのかわからない
マンボウ科の魚はこのようにとても大きいのです。標本にして保存するのは容易なことではなく、ホルマリンやアルコールなどに浸けて大きすぎて保存も困難です。
成長した標本を調べないと分類学的な結論を出せないために、未だにマンボウ科に何種類いるのか、明確な答えが出ていないということです。
とりあえず、特定されているものは、、、マンボウ属のマンボウ、ウシマンボウ、カクレマンボウの他に、ヤリマンボウ属のヤリマンボウ、クサビフグ属のクサビフグです。
知られているものの中で、日本近海では「マンボウ」と「ウシマンボウ」が多く見られるそうです。
マンボウの目
目にはまぶたはないのですが、ふぐのなかまであるマンボウは目の周りの筋肉を使って閉じることができます。
目には寄生虫がついていて、マンボウの目はほとんど見えていないそうです。ちなみに皮膚は、厚く粘膜で覆われていますが、皮膚にも寄生虫が付着しているそうです。
マンボウはほとんど目が見えないために、水族館にいるマンボウは、水槽の壁にぶつかってしまうこともあるそうですよ。マンボウの水槽には、けがを予防するために透明なフィルムを貼っていると聞きました。
マンボウの口
歯は、ふぐの仲間になるので歯は癒合して大きな板になっています。鳥のくちばしのような形ですね。板状の歯が上下に1枚ずつあり、これがくちばしのように見えるのですね。
マンボウはストレスに弱い
マンボウはストレスに弱く胃腸が弱いということです。なにか、人間と似ていますね。
健康管理、ストレス管理が必要で、エサにはエビやアジなどをすり身を団子にして与えている水族館が多いのです。ビタミン剤や漢方などを混ぜてあたえていると聞きました。本当!?って疑ってしまいますね。ケアが十分にされているのですね。
ちなみに、野生のマンボウはクラゲやプランクトンを好んで食べていますが、エビなどの甲殻類やアジなどの小魚なども食べるそうです。
マンボウの卵
マンボウの卵巣には約3億個の卵が入っています。こんなに多くの卵を産卵して生き残って成魚になるのはわずか2匹程度と考えられています。卵や子どものほとんどは他の魚や無脊椎動物に食べられてしまうのですよ。そして、若い小さなマンボウはサメや大型の魚におそわれることも多いです。
マンボウの稚魚は体に多くの棘があり「金平糖」と呼ばれています。その姿からは成魚の姿は想像がつかないですね。
マンボウの調理
マンボウに関しては、日本でも専門漁はありません。
マンボウは定置網で晩春から夏に獲れ、船上や漁港で解体されます。
その身は軟らかく淡白な白身で、刺し身、また酢の物としては非常に美味とされています。マンボウの刺身、ってどのようなものでしょう。興味あります。
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今回のこの投稿のように切り身にされ、味噌漬け、味醂干しなどで販売されることもあるのですよ。腸は塩蔵されたりしますが、野菜と煮付けたりもします。また、マンボウの肝和えは知る人ぞ知る美味なのだそうです。
マンボウの肝和えの作り方は下記のとおりです。
- マンボウの肝・酢・砂糖・酒で肝みそを作る
- マンボウの身を食べやすい大きさに切る
- 肝みそで和える
よく見るYouTubeのチャンネルにマンボウを調理している動画がアップされていました。
マンボウの地方名
マンボウの地方名を探しました。様々な地方名があることから、マンボウは各地に生息している(いた)と考えられますね。
- ヘパルプ:北海道・アイヌ語
- キナポ―:北海道・アイヌ語
- キナボウ:北海道・松前
- ナンボウザメ:北海道・松前
- キナンボ(キナンポ):函館
- キナッポー:青森県
- ウキ:東北地方
- ウキギ:東北地方
- マンボウザメ:仙台
- ウキキ:東北地方・常陸・水戸・関東・常奥・奥州・常州・東海・陸奥国岩城・備前・熊野
- マンザイザメ:仙台
- ユキイカダ:新潟
- ユキナメ:新潟県出雲崎・越州・荒浜
- マンボ:千葉県
- マンザイラク:神奈川県相模地方
- ウキキサメ:東海地方
- クイザメ:富山県
- クイシャメ:富山県
- クヒザメ:富山県
- カマブタ:静岡県網代
- ホンマンボウ:静岡県網代および稲取
- フナワニ:京都府丹後
- ユキ:京都・若狭
- マンザイ:福井県敦賀
- ユキザメ:福井県
- イササメ:兵庫県網干
- アバラボウ:周防通津浦・江尻浜
- ウオノタユウ:瀬戸内海・伊予越智郡瀬戸崎村瀬戸
- タユウサン:愛媛県今治市大三島
- バンバラバン:愛媛県三瓶町
- マンボロ:高知県須崎
- オキマンザイ:土佐・佐州・安芸国広島
- マンブ:長崎県壱岐
- タカラボウ:北九州
- ハバラボウ:北九州
- ナタボウ:大分県
- バーバラボー:大分県
- バラバア:小野田・大分県
- バラバー:大分県
- バアバラボウ:大分県
- ボラバア:大分県
- シキリ:鹿児島
- トキリ:鹿児島
- マンプ:鹿児島県内之浦
- マンブ―:鹿児島県下甑島
- シチャー:喜界島
- マンボオ:相模三崎・和歌山・高知須崎・富山・江ノ島・寺泊
- マンボウ:三崎・和歌山・高知・富山・奥州・備前・水戸・熊野
マンボウの書き方(漢字)
マンボウの名前が各地で様々にあることと同時に、漢字での表記も様々です。あまりにたくさんあるので、読み方、その意味は割愛させていただきます。
- 浮木鯊
- 牛魚
- 沖万歳・澳万歳
- 岐奈房
- 鹿子魚
- 止吉利
- 志於里加
- 万歳
- 万歳楽
- 満方魚
- 漫坊
- 満方
- 査魚
- 翻車魚
- 飜車魚
- 円坊魚
- 満方魚
- 万宝鯊
- 雪筏
- 雪
- 雪魚
- 雪滑
- 雪魚
- 宇岐岐
- 万宝
- 満肪
- 翻車
- 沖歳楽
- 斑車魚
- 浮亀鮫
- 浮魚
漢字は表語文字(昔は表意文字と教えていた)なので、漢字を眺めていると漠然とですが、マンボウの様子が浮かんできます。
今回行った紀北町
紀北町は三重県南部海沿いの町です。
紀北町は観光でも楽しいところです。世界遺産・熊野古道もありますよ。
私たちは釣りでよく行くところです。メジナ(グレ)や黒鯛(チヌ)をよく釣ります。
今回訪れた紀北町(三重県)にはマンボウを食べる習慣があります。マンボウは紀北町の魚になっているのですよ。マンボウの名が道の駅にもついている「紀伊長島マンボウ」という道の駅があります。そこでもマンボウが売られているのです。道の駅の名前になっているほどの名物なんですね。
マンボウの像もありました!
マンボウを実食!
マンボウってかわいいですよね。小さな丸い目、小さなお口、大きな体をゆらゆらさせながら泳ぐ姿はとても愛嬌があります。この水族館で人気者のマンボウを食べる地域があると聞いてびっくり。道の駅紀伊長島マンボウにはマンボウの串焼きが売られていたり、レストランではマンボウ焼き、マンボウフライ、マンボウカレーなどなどマンボウ料理がいろいろ楽しめる所もあります。
今回私たちはスーパーでマンボウの味醂漬けを買いました。
今回買ったマンボウ
丸政海産有限会社さんのものです。
マンボウは食べたことがないのでどんな味がするか想像もつかないのですが、はじめての経験に興味津々です。
身が薄いので、フライパンでシイタケと共に両面をさっと焼いていただくことにしました。
シイタケと味醂のいい香りがしてきました。
味醂の照りがよく出ていますね。
食べてみると少しクセはありますが、しっかり味付けがされているのであまり気になりませんでした。
脂は少なく淡白な感じで食感は鶏のささみのようです。甘辛い味なので白いご飯によく合うと思いますよ。
調べてみると、肝や腸もおいしいらしく、身よりも好んで召し上がる方も多いとか。
次回は肝や腸、マンボウフライなどにも挑戦してみたいと思います!