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食べ物のことわざ|卵酒を飲むと風邪が治る

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恐ろしい思い出

確か、小学3年生のお正月の頃だったと思います(1970年くらい)。旧大口市の父の実家に行った時のことです。僕はあまり風邪をひくことはなかったのですが、珍しく風邪気味で元気なく寝込んでしまいました。

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旧大口市は寒いところ

鹿児島県の北端の内陸部、鹿児島市から北へ約75kmの場所に位置する。北側は熊本県と接しており、東側は宮崎県とわずかに接している。川内川が市を縦断する。中心市街地である市域の南東部は大口盆地の一部を成しており、標高は180m前後である。内陸の盆地であるため冬場は最低気温が0℃以下の氷点下になることも多く、積雪もしばしば見られるため、菱刈町霧島市福山町上場地区とともに「鹿児島の北海道」と称される。

ウィキペディアより

鹿児島の北海道ですよ!現在は伊佐市となっています。

よく正月に一面雪景色というものを見ました。鹿児島なのに零下になることもよくあるのですよ。2016年の正月はマイナス15.2度まで下がったそうです。

旧大口市では祖母が早く亡くなったので、祖父はひとり暮らしでした。その祖父がこれが効くからと、卵酒を作ってくれたのです。

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極めてまずい卵酒!

一般的には、卵酒って日本酒で作りますよね。舞台はもう50年前の鹿児島です。日本酒なんかありません。

鹿児島では、お酒といえば芋焼酎しかないと言えるほどの時代でした(ビールはもちろんありました)。つまり日本酒はなかった状態と思ってください。

今は全国的によく飲まれている芋焼酎ですが、その当時は南九州だけで飲まれている状態でした。普及に関しては、昭和40年代から50年代にかけて(1965年くらいからでしょうか)徐々に国内を北上し、今では全国的に広まっていますね。

祖父が持ってきた「卵酒」は、なんと芋焼酎のお湯割りに卵とネギと味噌が入っているもの。とても子供には「美味しい」と思えなかったです。それに、昔の芋焼酎は臭みの強いものでした。

味はともあれ飲んだ後にすごく発汗して、すぐに回復はしましたが、、、、。

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年配の人の思い出は

「卵酒は卵を割って小鉢に入れ、少量の砂糖を加え、熱燗をした日本酒、それらをよくかきまぜたものでした。戦時中の食料の乏しい時期だけに、卵酒は風邪薬としてよりは、うまい飲みものとして記憶に残り、それからと言うもの、風邪をひくと決って母に卵酒をねだるのでした。」

「うまい飲みもの」と書いてあるものもありました。

戦後の食糧難の時代の話ですね。食べ物のない時代、美味しく感じたのでしょう。

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卵酒はなぜ効くか

卵酒はなぜ風邪に効くかというと、生の卵白の中のリゾチームという酵素が働くからです。リゾチームは細菌を保護している細胞壁を攻撃する小さな酵素です。

細菌は、短いペプチド鎖と絡み合った炭水化物の鎖で強固な表皮を作ります。壊れやすい細胞膜が細胞の高い浸透圧に抵抗するための補強を行っているのです。リゾチームはこの炭水化物の鎖を分解します。そして、細胞壁の構造的強度を損なわせます。

そして最後には細菌は自分自身の内圧によって破裂するのです。

リゾチームの発見

1922年にイギリスの科学者アレクサンダー・フレミングにより、リゾチームが細菌を溶かす酵素であることが突き止められました。

細菌を培養する実験をしていた時、クシャミをしてしまい、鼻水がシャーレの中に飛び散ったことから発見は始まります。翌日見てみると、鼻水の周囲だけ細菌が増殖していなかったのです。

フレミングは、鼻水だけでなく、涙や唾液などにもこの「殺菌効果」が見られることを見出し、酵素の働きによるものだろうと推定しました。

そしてこの酵素を、「分解酵素」の意味を込めて「リゾチーム」と命名しました。

成果を論文にして発表しましたが、当初は全く注目されなかったのですよ。後にフレミングは、ノーベル生理学・医学賞を授与されています。

リゾチームが減る!?

このように、リゾチームは、卵白だけでなしに、人間の涙、鼻汁、唾液などにも多く含まれていて、外から侵入してくる黴菌やウイルスを防いでいるわけです。

ところが風邪にかかったときは、リゾチームの量が減ってしまい、体の抵抗力が弱ってしまいます。それゆえ、リゾチームの多い卵白を食べて、リゾチームの材料を供給することで、風邪を治そうというわけです。だから卵酒が昔からよいと言われたのですね。

動物にも

リゾチームは動物の唾液にも含まれており、犬や猫が傷口を舐めているのは唾液中のリゾチームで殺菌するためなのですよ。


これはいってみれば生命の抵抗力そのものですね。

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卵は生で長く保存できる

卵が意外に生で長持ちする理由の一つはこのリゾチームにあります(産卵直後の卵の内部はほとんど無菌状態です)。

海外では卵の賞味期限は1か月以上が普通なんですよ。これは生で卵を食べる習慣がないからです。

アメリカでは、養鶏場での採卵は、卵が産まれてから1か月以内に行うこととされています。採卵され、販売用のパッケージに詰められるときに、卵には「販売期限」が記入されます。
アメリカの農務省では、販売期限から3週間から5週間経っても熱を加えて調理すれば、問題はないとしているのです。

薬品にも

卵白のリゾチームは精製されて、食品保存料や風邪薬などに使われています(塩化リゾチーム等)。卵白から特殊な技術を用いて抽出され、風邪薬はもちろん、歯周病予防剤、目薬など、広く一般医薬として大活躍しているのですね。この塩化リゾチーム、実はたまごの白身に0.3~0.4%含まれているんです。

加熱するとどうなるか

リゾチームはタンパク質性の酵素であり、加熱すると変性してその働きは失われます。

だから、生卵は日持ちしますが、ゆで卵は悪くなりやすいのです。

アミノ酸

たんぱく質を構成するのは20種類のアミノ酸です。その中で、私たちの身体にとって必要不可欠で食事からとらなければならない8種類のアミノ酸のことを「必須アミノ酸」と言います。
卵にはこの必須アミノ酸がバランスよく含まれており、私たちの免疫力をアップすると言われています。免疫力は、体に入ったウイルスなどを撃退する力ですね。これが低下すると風邪をひきやすくなったり、体力が落ちたりしてしまいます。

卵を使った卵酒はこういう面でも風邪に効きますね。

お酒の方は、、、

一方、卵酒のお酒のほうは、お酒に含まれているアルコールが血行をよくして、身体を温
め、人によっては眠気を催させます。風邪にかかったときの大切な養生法、栄養のある食品を摂って静かに寝ていること、それらの原理にうまく適合します。

そういえば、前述の僕の経験、卵酒(焼酎)を飲んだ時のことですが、その後ぐっすり眠れました。

江戸時代にも

江戸時代の料理書「料理物語」には以下のように書いてあります。

「玉子をあけ、冷酒を少しずつ入れ、よくときて塩を少し入れ、燗をし出し候也。玉子一つに酒をりべに三盃入るよし」

卵をときながら冷酒を加え,塩で味をつけ,そしてお燗(かん)をして出すということですね。

この他にも、卵を使った料理酒が記載されています。砂糖を入れると練酒、塩を入れると卵酒と区別しています。

与謝蕪村(1716~1783年)の句

いざ一杯まだきににゆる玉子酒

卵酒は滋養強壮の効果があるとされ、江戸時代からよく飲まれていました。この句は、ぐらぐらと煮えた卵酒のとろりとした様子や、寒い日に味わう滋味深いお酒の感じが伝わってきますね。

東海道五拾三次/広重/日本橋朝の景

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海外にもある卵酒/エッグノック(Egg Nog)

エッグノックは、イギリスあたりが発祥の地のようです。北米ではよく知られているそうですよ。牛乳、クリーム、お砂糖、卵でできた飲み物で、お好みでブランデーやウイスキーを加えます。これも風邪予防ために飲む人がいるようですよ。

いずれにしても、昔から飲まれていた卵酒は、卵や酒の栄養分が、身体を元気づけ、風邪に対する抵抗力を強くするので、卵酒の効用もまんざらではありませんね。

\僕は大きめの焼酎グラスを使っています/