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さかな
さかなの文字をまず分解します。「さか」と「な」に分けて考えましょう。
1)「さか」
これは「酒」のことですね。簡単です。
2)「な」
漢字で書くと、「菜」です。副食物ということです。おかず、ですね。または、料理のことを指します。「菜」が使われているものを探すと、、、。
- 「菜館」中国語でレストランのことですね。
- 「惣菜」ご飯とともに食べる料理ですね。副食、おかず、総菜ともいいます。
- 「菜単」ツァイタン、中国語で献立表のこと。メニューですね。これは口語です。
- 「菜譜」ツァイプー、中国語でこれも献立表のこと。これは文語です。
まとめると、、、1)酒 + 2)菜 = さかな というわけです。
肴は?
肴という文字は、漢音ではコウ、呉音ではギョウです。
漢音(かんおん)とは、日本漢字音(音読み)の一つ。古くは「からごえ」とも呼びました。7, 8世紀、奈良時代後期から平安時代の初めごろまでに、遣隋使・遣唐使や留学僧などにより伝えられた音をいいます。
呉音(ごおん)とは、日本漢字音(音読み)の一つ。建康(今の南京市)付近の漢字音で、漢音を学び持ち帰る以前にすでに日本に定着していた漢字音をいいます。中国語の中古音の特徴を伝えています。
肴の意味
食べるために煮た魚肉のことです。
中国の水煮魚(スェイツーユィ)
「肴核」
「肴核」。こうかく、と読みます。さかなと果物のたね。つまり、ごちそうのことです。
有名なものでは、「赤壁賦(せきへきのふ)」の中にこの「肴」という文字が見られます。赤壁賦は北宋の蘇軾(そしょく)が作った前後二編の賦(前後二編の韻文)です。
肴核既尽、杯盤狼藉。
相与枕藉乎舟中、不知東方之既白。
「肴核(こうかく)すでに尽きて、杯盤狼藉たり。相(あ)いともに枕藉(ちんしゃ)して、東方のすでに白(しら)むを知らず」(酒のさかなも尽きて、杯や盤(さら)が散らかり放題(ほうだい)、互いを枕にしあって眠り、東の空が明るくなったのも気づかなかった)
ちなみにこの「赤壁賦(せきへきのふ)」は様々な書家が書いて書道の手本にもされています。趙孟頫 (ちょうもうふ)の「赤壁賦(せきへきのふ)」が有名です。
もう一つの使い方
「肴膳」(こうぜん)。つまり、ごちそうのこと。
張華(中国,西晋の文学者,政治家)の「軽薄篇」という詩の中にこの「肴膳」が出てきます。
末世多軽薄
驕代好浮華
中略
肴膳尽柔嘉
つまり、世の末は軽薄なものが多く、驕れる者たちは上辺の華やかさを好む、、、(中略)、、、ご馳走は柔く良いものを好み、、と続きます。
この「肴」(こう)の文字が日本に入ってきて
もともと中国から入ってきた文字「肴」(こう)というものに日本での「さかな」という読みと意味をあてました。
日本での表現
常陸国風土記には、「酒の肴」という表現が出てきます。713年のものですね。
奈良時代に編纂された常陸国風土記の久慈郡密筑の里の条に「密筑の大井」として記されたものがあります。湧水の地で、「大井」とは水を汲む場所という意味があります。
「夏の暑き時、遠邇の郷里より酒と肴とをもちきて、男女会集いて、休い遊び飲み楽しめり。
(暑い夏の日、涼しい泉のたもとに若い男女がおいしい食べ物やお酒を持って集まって楽しい時間を過ごしていた。)
「魚」は?
同じ音で「魚」がありますね。
まず、「さかな」と聞いて思い浮かべるのが「魚」という文字。
もともと、「魚」は「うを」と呼んでいました。江戸の台所は「日本橋魚市(うをいち)」として知られていました。魚市場も「魚河岸(うをがし)」ですね。
音読みでは「ぎょ」です。
和訓では、
- 「いお」
- 「お」
- 「とと」
- 「な」
和訓とは、漢字・漢語の持っている意味に当てた、やまとことばによる読みです。
古来の和訓の中に「さかな」とは入っていませんね。
江戸時代になると
江戸湾で漁業が盛んになりました。庶民の食卓にも様々な魚が上がるようになり、酒の「肴」に、「魚(うを)」がたくさん食べられるようになりました。
そこで、「うを(魚)」が「さかな(肴)」として食べられることから、「うを(魚)」を「さかな」と呼ぶようになったのです。
つまみ
「つまみ」とは手でつまんで食べられるお酒の副食です。つまり、枝豆とか乾き物とかですね。
枝豆なんかつまんで食べられますね。
あて
「あて」とは主に近畿地方で使われる言葉で、意味として「肴」や「つまみ」と一緒です。語源は「酒席に『あてがう』おかず」からきています。
お腹一杯食べる料理というものでなく、ちょっとした小皿料理というイメージでしょうね。