私たちが作ったジビエ料理/ 三重県産鹿肉の赤ワイン煮込み
ジビエってなに?
ジビエはフランス語です
ジビエ(gibier:フランス語)とは、古フランク語 gabaiti[gabεti]が語源です。これは「鷹狩り」の意味なんですよ。狩猟により得た野生鳥獣の食肉を意味する言葉なのです。
古フランス語じゃないですよ。古フランク語です。
古フランク語とは、古代フランク人の言語。西ゲルマン語に属し、現在のオランダとその周辺に当たる地域でメロヴィング朝時代に使われた。フランク語ともいうが、現代のこれらの地域で用いられている言語などと区別するために古の字をつける。
古フランク語は現代の言葉にも多く影響しています。
ジビエの英語は
ジビエは英語ではないということがお分かりになりましたね。英語では以下のように言います。
Wild Game Meat
Game はあのゲームソフトのゲームですよね。スポーツなどもゲームと言いますが、猟鳥(獣)の肉、という意味もあるのです。
ジビエは高級料理?
フランス王や貴族は狩りを好みました。なぜなら、フランク族戦士の末裔であるフランス王や貴族は狩りに戦闘訓練の要素を強く感じたからです。
フランス王や貴族は、この獲物をジビエ料理として振る舞い、領地の広大さや豊かさを示しました。
ジビエ料理とは庶民の口に は到底入らない類のグランド・キュイジーヌ(高級料理)だったのです。
ヨーロッパでは狩猟を目的とした土地の管理を行なってきた歴史があります。狩猟が貴族によるスポーツハンティングとして残ったわけですね。
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ジビエは必ずしも鹿や猪だけではない
ジビエという言葉は,鹿や猪だけを指すわけではありません。家畜家禽でない野生動物由来の肉という表現が正しいのです。
ジビエは主に2種類
- 野禽(ジビエ・ア・プリュムGibier à plume)
- 野獣(ジビエ・ア・ポワルGibier à poil)
日本のジビエは主に、2番目のジビエ・ア・ポワルGibier à poil ですね。
ジビエ(ヨーロッパ)
EU(欧州連合)は、狩猟肉の流通を規制するために、2006年に一般食品法を改正しました。旋毛虫症(生の肉や加熱が不十分な肉を食べることでも発症する病気)に感染するリスクのある大型動物の肉は、販売する前に保健センターで検査を受ける必要があります。
EU規則の中、「動物由来食品の特定衛生規則について」の附則で,農場飼育された狩猟鳥獣の肉,野生鳥獣の食肉について触れています。その中では、狩猟者の教育や大型野生動物、小型野生動物の取扱いや生産体制構築のための要件が細かく規定されています。
改正されたEUの法律はまた、狩猟肉販売業者が特定のトレーサビリティ性能基準を満たすことを要求しています。つまり、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることです。
市場で販売されている猪肉や鹿肉のほとんどは梱包されています。パッケージには識別番号が印刷され、購入者は誰が動物を狩ったのか、どこで狩られたのか、販売業者の名前を追跡できるようになっているのですよ。
EU内の違い
フランス
EU基準に沿った安全な狩猟肉を提供してきましたが、検査システムの確立に関して他のEU諸国に遅れをとっています。肉検査員の資格制度はありません。狩猟肉を一枚一枚検査するのに時間とお金がかかるようです。フランスではいまだに特別な高級食材の扱いです。
イギリス
狩猟者は狩猟肉の販売プロセスを簡素化するために肉検査官としての資格を取得し、その結果、ジビエの流通が増加しました。
ドイツ
ドイツ狩猟連合会は、2017年度にドイツで消費されたジビエの量を発表しました。それによるとジビエ消費量は全国で36,000tにのぼり、その数値は前年度に比べ34%も増加しました。ジビエの人気は上がっているようですね。
スイス
スイスの山岳地方ではレストランのオーナーシェフがハンターであることが多く、臭みのまったくないフレッシュなジビエ料理が食べられることもあるようです。スイスでは冬眠前に脂肪を蓄える秋に開猟期となり、各地のレストランに特別メニューが登場します。
アメリカ合衆国
アメリカでは野生動物の肉は商取引が禁じられています。 法的に許可されているのは検査済みの肉だけであり、狩猟の獲物の肉は検査されないからです。
現在, アメリカで消費者の手に入る「野生動物」の肉のほとんどは、農場や牧場で飼育されたものなのですよ。
こういった肉は 「半家畜」肉ですね。現在アメリカでは、独特の風味と脂肪の少なさから、さまざまな鹿やアンテロープ、バッファロー、その他の狩猟獣の肉の販売量が増加しています。
個人がジビエの所有者となる方法
アメリカでは法律でこのように定められています。
個人がジビエの所有権を得る唯一の方法は、ライセンス取得者が狩猟して殺すなど、合法的な入手に限られる。
そして野生動物に関し法律が細かく適応されています。
ビッグ・フット
未確認の動物です。
ビッグフット(英:Bigfoot)は、アメリカ合衆国で目撃されるUMA(未確認動物)、または同種のUMAの総称である。身長は2m、体重は200 – 350kg。二足歩行し、歩幅は1 – 1.5m。足跡は大きなもので約47cm。筋骨隆々で、全身に褐色または灰色の毛が密生している。 顔には毛が生えておらず、鼻が低く、目が落ち窪んでいる。強烈な体臭を放つとされる。
ウィキペディアから
テキサス州:法律でビッグフットを狩るのは合法、サスカッチ(同じく太平洋沿岸に出没したとされる雪男)も撃ち殺して良い
カルフォルニア州:州が定める魚類鳥獣条例でビッグフットは非狩猟哺乳類に該当するために狩るのは違法
このようなものに対しても州ごとに法律があるのが興味深いです。
中国
中国4千年の長い歴史の間に様々なものが食べられました。もちろん、ジビエも含まれます。
ジビエを含む最も有名で贅沢な食事の1つは、満洲と漢の人々が権力争いの中で一緒になることを目的として、康熙帝の66歳の誕生日のお祝いのために開催された満漢全席です。
清朝は漢民族ではなく、北方ツングース系民族・満州族が建てた王朝です。「満漢全席」の「満」は満州族の伝統料理、「漢」は漢民族の伝統料理を意味するのですよ。「満漢全席」とは満族料理と漢族料理の粋を数多く一堂に集めた宴席またはそこで出される料理を意味します。饗宴は、クマの足、山羊、猿の脳、その他の種類の狩猟肉など、3日間で少なくとも108の料理で構成されていると報告されているのですよ。
様々なジビエ
現代でも様々なジビエが販売、消費されていました。中国の市場に行くとなんでもあると言われていたのはうなずけますね。
ジビエの健康リスク
しかし、ジビエを食べることの利点があるとされているにもかかわらず、実際には、これらの動物がさまざまな病原体を運ぶリスクが高いのです。これは、人間にとって大変危険であり、致命的でさえありますね。
新型コロナ感染症(Covid-19)の発生後、中国は野生動物の販売と消費を規制しました。そして、その後、中国当局は、野生動物の取引と消費を直ちに禁止することを発表しました。そのための「厳しい罰」もあります。消費を目的とした野生動物の狩猟、取引、輸送も許可されていないのです。
日本
そもそも日本では獣肉を食べていた
縄文時代の遺跡から、狩に使った鏃や斧などの石器や、鹿、猪、などの動物の骨が沢山出てきています。そして、3世紀ごろの日本(ヤマト)には、誰かが亡くなった際、喪主は肉食をがまんする習慣があると『魏志倭人伝』に書かれているそうですよ。これは「物忌み」のひとつとして肉食を慎む「禁欲」だったと考えられています。なるほど!この時点では日常における肉食は「禁忌」ではなかったのですね。
日本に仏教が伝来すると、仏教の教義による殺生戒めに基づき、675年、天武天皇が最初の食肉禁止令を発布しました。
「牛・馬・犬・猿・鶏の宍(にく)、食ふこと莫(なかれ)。以外は禁の例に在らず。若し犯すこと有らば罪(つみ)せむ」
この時禁止されたのは、牛・馬・犬・鶏の家畜と、猿の肉です。しかし、鹿や猪は禁止されませんでした。稲作の獣害が原因と考えられています。これは現在、鹿や猪のジビエが日本で振興されている状況と似ていますね。
貴族や武士を中心に
その後、貴族や武士を中心に獣肉は食べられなくなります。仏教の影響からですね。しかし、農村では作物への被害があること、そして貴重なタンパク源として摂取できることから鹿は捕獲され食されていました。
江戸時代には猪肉を「牡丹」、鹿肉を「もみじ」とよび、江戸では食べられていたといいます。人々は隠語を使って肉料理に舌鼓をうっていたわけです。
食肉に関する法律
日本には食肉に関する主な法律が3つあります。
- と畜場法:と畜場の経営及び食用に供するために行う獣畜の処理の適正の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講じ、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする(第1条)日本の法律
- 食鳥処理法:食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(しょくちょうしょりのじぎょうのきせいおよびしょくちょうけんさにかんするほうりつ、平成2年法律第70号)は、家きんの生産の実態及び食鳥の疾病の発生の状況を踏まえ、食鳥肉等に起因する衛生上の危害の発生を防止するための法律。
- 食品衛生法:日本において飲食によって生ずる危害の発生を防止するための日本の法律。
これらの法律において検査、流通されているのは、以下の食肉だけです。
- ブタ
- ウシ
- ウマ
- ヒツジ
- ヤギ
- ニワトリ
あれ?ジビエは?
ウシ、ブタ、ニワトリのような家畜の場合、農家で飼料を管理しつつ、その健康状態を管理しています。これが、狩猟により野生状態(どのような状態かわからない)で捕獲する野生動物には家畜のような「飼料管理」「健康管理」「衛生管理」ができません。
ジビエの場合、野生動物はハンターが捕獲しますよね。
その後、動物を食肉にするためには、食肉処理業の免許が必要です。
これは、厚生労働省が2014年に公表した「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」に基づいています。
現行、シカやイノシシを食肉として解体・処理するために,食品衛生法第52条第 1項の規定による営業許可のうち、「食肉処理業の許可」を受けた施設で行われています。これは平成28年の時点で、全国で約563箇所あります(厚生労働省調べ)。
そして、各地方公共団体 でもジビエ対応が求められ,それぞれで「ガイドライン」や「マニュアル」が策定されるようになってきています。
日本で今後ジビエの流通のためには、この食品衛生法の部分を整理する必要があると議論されています。
鳥獣による被害
1.鳥獣による令和2年度の農作物被害については、被害金額が約161億円で前年度に比べ約3億円増加(対前年2%増)、被害面積は約4万3千haで前年度に比べ約5千ha減少(対前年10%減)、被害量が約45万9千tで前年に比べ約2千t増加(対前年0.4%増)しています。
2.主要な鳥獣種別の被害金額については、シカが約56億円で前年度に比べ約3億円増加(対前年6%増)、イノシシが約46億円で前年度に比べ約0.7億円減少(対前年1%減)、クマが約5億円で前年度に比べ約0.6億円増加(対前年14%増)、ヒヨドリが約4億円で前年度に比べ約2億円減少(対前年35%減)しています。
これは農家に対しては深刻な問題ですね。
農作物の被害は甚大
令和2年度の農作物被害金額約161億円のうち、野菜やイネ、果樹の3分類で被害金額の約60%を締めています。
つい最近も、岩手県西和賀町で、「農作物を全て害獣に食べられた」と力なく笑っている農家の話を聞きました。「食べるのはいいけど、片付けまでしてくれたらいいのに」とまで言っていたらしいです。
鳥獣害の原因は以下の2つ
- 狩猟者の減少
- 耕作放棄地の増加
ジビエが注目されている
農林水産省もジビエ利用拡大に積極的です。「総合対策交付金などの補助金」や「ジビエサミット」というイベントの開催などの様々な取り組みを行なっています。農村地域で深刻な被害をもたらす野生鳥獣の被害防止対策ですね。
実際、国からの補助金や支援を活用して、捕獲数が年々増加する野生鳥獣を地域資源として捉え、ジビエとして有効活用しようとしている自治体、そして企業もあります。
農林水産省では、捕獲した鳥獣の加工処理施設の整備や捕獲した鳥獣を用いた商品の開発、販売・流通経路の確立などの取り組みを支援しています。食肉利用の取り組みを全国的に推進する観点から、品質確保・衛生管理等に係るマニュアルの作成・配布や技術研修等を実施しています。
日本の場合、農作への被害からジビエは注目されたのですね。 そこが、ヨーロッパなどと違うところかなと思います。