スルメとアタリメ
写真をよく見てください。右がスルメ、左がアタリメです。
、、、、というのは「ウソ」です!。
スルメとアタリメは全く同じ物です。
ちなみにスルメの語源は
群れて泳ぎ墨を吐くところから「墨群れ」と呼ばれていたものが、後にスルメに変化したとの説があります。スミムレ→スルメ ですね。
それではなぜスルメをアタリメと呼ぶのでしょうか。それは、スルメが日本語での「忌み言葉」に値するからなのです。
忌み言葉とは
小学館の日本大百科全書によると
「災いの降りかかるのを恐れて口にしないことば。また、その避けていわないことばのかわりとして用いることば」
つまり、それ口に出しちゃうと悪いことが起きますよ。という日本人独特の発想です。つまり「言霊信仰」からきているのですね。
言霊信仰って?
『神道大辞典 第二巻』には
「言に靈を認める日本古代の信仰。言が単に思想や 感情を述べる方便ではなく、生命あるものとする。 言霊という語は『萬葉集』其の他に見られる。」と記載されています。
つまり、大昔、文字がないころ、言葉は単なる伝達の道具でなかったんです。言葉には、霊威や威力などの何らかの力を持つと信じられていました。こうして八百万の神々の思想から発展して、「言葉にも神が宿る」とする言霊信仰が古代の日本に生まれたのではないかと考えられています。
つまり、それいうと「いいこと」が起こる、または「悪いこと」があるというものです。
万葉集には
万葉集に言霊が出てくる歌を一つ取り上げます。
「志貴嶋 倭國者 事霊之 所佐國叙 真福在与具」
しきしまの日本(やまと)の国は 言霊の佐(たす)くる国ぞ 真幸(まさき)くありこそ
柿本人麻呂 『万葉集』 巻13-3254 相聞歌
この日本の国は 言霊の
助ける国なのだよ。だから無事であっておくれ
「言葉は単なる記号ではなく、現実に作用しそれが 指し示す実体を呼び起すという観念、すなわち言霊の信仰がある。」と記載されています。
それでは、一つ例をあげてみましょう
息子「明日、旅行に行くけど、飛行機落ちないといいな」
お母さん「そんなこと言うと、本当に飛行機が落ちるからやめなさい!」
これなど、いい例ですね。息子の言葉にボーイング787などを落とす力があるとは、誰も信じませんよね。でも、日本人の心の奥底にそういう言霊信仰が万葉の時代からずっとあるのです。
それじゃ〜スルメの何がいけないの?
和食の世界では、板前さんの多くは博打が好きだったのかもしれませんね。「スル」は「博打で負ける」ことを意味するので、嫌われた言葉だったのです。それ言っちゃうと、悪いことが起こるという「忌み言葉」ですね。つまり、「スルなんていうな!縁起が悪い!今度の賭け事で本当に負けてしまうじゃないか!」というわけです。それゆえに、「スル」(負ける)を「アタル」(勝つ)に置き換えたのです。
同じように「すり鉢」も「あたり鉢」に言い換えました。このような言葉は日本語の中にたくさんあります。
全て言霊信仰からくる「忌み言葉」だったんですね。