僕はたくさんの国を訪れたことがありますが、同じようなスパイス、例えばコショウ、トウガラシ類でも、「あれ?なんか違うな」と感じることがあります。
調べたらコショウ属(piper)にはなんと1000種類が存在するのです!それも、食用以外に利用することも多いということが興味深いです。調べると実だけでなく葉っぱの使い方も面白いと思いました。
それでは代表的なコショウの近縁(分類上、近い関係)を紹介しますね。
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ロング・ペッパー(Piper longum)
インド原産の植物です。過去、ヨーロッパではマスタードの次に辛味スパイスとして利用されていました。
日本では「ヒハツ」と呼ばれています。
ギリシャ・ローマ時代には黒コショウより好まれたそうです。このコショウのサンスクリット語の名称 pippaili がコショウ pepper の語源となりました。ロング・ペッパーは紀元前5−6世紀頃、ヒポクラテスによってギリシアにもたらされました。彼はロング・ペッパーについて初めて書物にした人物です。ヨーロッパではかなりポピュラーだったロング・ペッパーも14世紀には黒コショウの人気に負けて、だんだん利用が少なくなります。
小さな果実が表面にぎっしり詰まった花穂(かすい/外見が穂のようなものをこの名で呼ぶことが多い)全体がそのまま細長いスパイスになることから、ロング・ペッパーと呼ばれています。
ピペリンが多いので、やや辛味が強く、木の匂いも強いです。現在は主に野菜のピクルスに使われます。
クベバ・ペッパー(Piper cubeba)
ひとつひとつの「液果」に尾の様な茎がついています。(果実の熟す時、果皮が多肉質または液質となるものを液果または多肉果と言い、果皮が乾いて、膜質か薄い皮革質になるものは乾果と言います。)このクベバ・ペッパーはインドネシア原産。17世紀にはヨーロッパの料理に用いられていたのですよ。原産地のインドネシアでは、今も、ソース、リキュール、のど飴、巻きタバコなどの香り付けに使われているのですよ。辛味の他に、新鮮さ、ユーカリ、木、スパイス、花の匂いがするとされています。
日本では「ヒッチョウカ」とも呼ばれています。このクベバ・ペッパーの歴史はかなりバラエティのあるものです。アラブの錬金術、ヨーロッパでの医学療法、紙巻きたばこ、お酒、と使われていました。
ちなみに、ターザンシリーズの小説を書いたエドガー・ライス・バローズはこのクベバ・ペッパーの紙巻きたばこが大好物でした。クベバ・ペッパーがなければ、ターザンは生まれなかったであろう、と自ら語っています。
1640年頃にポルトガル王が黒コショウ(Piper nigrum)を奨励するためにクベバ・ペッパーの販売を禁止したという記録があります。医学的使用のために19世紀のヨーロッパでしばらく復活しましたが、以後のヨーロッパの市場からは実質的に消えていて、見つけることは困難です。黒コショウを売りたいがため、商業主義の影響で消えていったのですね。
アシャンティ・ペッパー(Piper guineense)
西アフリカでは様々な料理にこのスパイスが使われています。ナツメグやササフラスのような香りだそうです。シチューに辛さと辛味を与える西アフリカ料理に使われています。
西アフリカでは、アシャンティ・ペッパーは高価なスパイスなんですよ。だから、控えめに使用されています。多くの場合、スープやご飯に(黒コショウと一緒に)加える前に、乳棒と乳鉢で数粒の穀物をすりつぶします。
アシャンティ・ペッパーを使ったナイジェリア料理(美味しそうですね)。
研究によると、アシャンティペッパーには防腐作用と抗酸化作用があることがわかりました。
キンマ(Piper betle)
アジアのコショウ属の植物。葉はクローブの香りがします。他の材料をキンマの葉で一口大に包み、これを口に含んで噛むという楽しみかたがあるそうです。嗜好品として古くから利用されています。主にビンロウジ(ビンロウの実)をキンマで包んで使います。
ビンロウはアジア、東アフリカでよく見られるヤシ科の植物です。
ビンロウの実は「噛みタバコ」に似て、「ビンロウジ」と言われています。
台湾には独特の楽しみ方があります。ビンロウの実、ビンロウジを半分に割って、そこにキンマの実を挟み、キンマの葉に石灰を塗り、包みます。ビンロウジには副交感神経に作用し、消化を促したり、瞳孔を収縮させる効果があるアレコリンと、鎮静効果を持つアレカイディンが含まれているそうです。
タバコのように使っているのでしょうね。なぜ石灰を使うのかというと、ビンロウジだけの場合は苦味と渋味が強くてリラックスできるどころではないため、石灰の成分で緩和され、後味が甘く感じるとのことです。つまり、ビンロウジの成分を体に入れたいけれど、すごく不味いので、石灰やキンマで味付けしているということになります。
合法ハーブ?
ちなみに、、、、、台湾では広く知られている事なのですが、 ビンロウジは中毒性があります。やめられなくなるそうです。あぶない、、、。
ビンロウジとキンマは夫婦の象徴として、現在でもインドやベトナム、などで、結婚式に際して客に贈る文化があります。台湾でビンロウジが2個包んだものは「双子星」と呼ばれているのですよ。
オハ・サンタ(Piper auritum)
オハ・サンタの葉の大きさは、30センチ以上になる可能性があるそうです。大きいですね。
南アメリカ北部からメキシコまで、南北アメリカ原産であり、フロリダ南東部とカリフォルニアでも栽培されているそうです。
メキシコでは様々な料理の風味付けに使われています。中央メキシコでは、チョコレート飲料のフレーバーに使用されているそうですよ!
肉をオハ・サンタの葉で包んで料理したもの(メキシコ/ちなみにこれはモグラの肉を使っていると書かれていました)