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USプライムビーフとは
「USDA (United States Department Agriculture :米国農務省/日本の農林水産省のようなものです)等級」により、アメリカの牛肉は厳格に格付けされています。
これは「アメリカの牛肉の質の高さを客観的に評価する方法として、世界に先駆けて導入した “牛肉格付けシステム” 」なのです。
これは脂肪の少ない乳牛種や雑種に対して、トウモロコシを与えて飼育する脂肪の多い純血種をたくさん売るために始まったのですよ。
現在のUSプライムビーフは
本国アメリカでは牛肉のグレードは8等級に分かれています。現在日本に輸入されている等級は上のグレードから3つ、 “プライム” 、 “チョイス” 、 “セレクト” がほとんどです。まるで相撲の番付、三役みたいですね。
8等級とは
肉質等級は、(1)牛の種類、(2)性別、(3)成熟度、(4)脂肪交雑などによって決定されます。
- 「プライム」
- 「コマーシャル」
- 「チョイス」
- 「ユーティリティ」
- 「セレクト」
- 「カッター」
- 「スタンダード」
- 「キャナー」
細かく分類してありますね。詳しくは、米国食肉輸出連合会のサイトに出ています。見慣れない言葉ですが米国から来た、ホールセールクラブチェーンのコストコなどでは表示してありますね。
さすがに食肉の歴史の長いところは違います。米農務省(USDA)によれば、米国人の肉の年間消費量は2018年の時点で、1人当たり99.8キロ。そして日本の農林水産省の食料需給表によると、2016年度の日本人1人あたりの食肉消費量は31.6キロです。肉へのこだわりが違うことは容易に想像できます。
それでは、その米国における牛肉格付けの歴史を見てみましょう。
脂肪の多い肉を売れ!
アメリカでかつて脂肪の多い肉の宣伝を率先してやっていたのは、アルビン・サンダース(Sanders Alvin, Howard 1860~1948)という畜産家広報誌の編集者です。自分の価値観を広げるために安いカット肉を食べることをこき下ろしました。
彼は脂肪の少ない肉を食べることを、「何本かの骨と少量の「猫の肉」だけで宴会を催すという大陸ヨーロッパにある話」と広く伝え、脂肪の多い肉を広めようとしました。「猫の肉」とはひどい表現方法ですね。今だったら、EUから抗議が来そうな話です。
「U.S.プライムビーフ」の誕生
アメリカでは、1916年、市場において枝肉を同一の基準で評価することを目的に、格付けの「仮基準」が考案されて以来、この格付けには長い歴史があります。
1926年、農務長官にオークリー・ソーン(1866~1948)というニューヨークの畜産業の資本家が就任します。彼が「霜降り度」を基準に牛肉等級化を始めました。
そして、1927年についに「U.S.プライムビーフ」が誕生します。
霜降り肉を大切にする国
その後、「霜降り」だけが牛の味をよくするということはない、と研究されますが、いまだに、「霜降り」が大事にされています。主に「霜降り」を大事にする国が3つあります。
それは、このアメリカ、韓国、そして、我が国、日本なんですよ。
脂肪への好みの変化
僕は1986年から数年アメリカに住んでいました。日本人として「霜降り」信仰があったので、スーパーなどではたくさんサシの入った「霜降り」の肉を探して買っていました。
ある時、これらの肉は「安い肉」の部類に入っていることに驚きました。なぜなら、その当時の健康ブームなどの影響により、「赤身の肉」に人気があったのです。そのおかげで、脂肪の多い肉は「霜降り」という高そうなイメージではなく、「貧乏人の食べる脂肉」のようなイメージだったのです。時折帰国した時には、「僕は貧乏留学生だから、毎日、向こうで霜降り肉しか食べられない」と、米国の食肉事情を説明し周りの人を笑わせてました。
生産者が変わった
市場に出る牛肉の質は、人々の嗜好が変わったことからの影響もありますが、生産者側の都合によるものも大きかったのです。
余剰穀物をなんとかしろ!
1930年代のアメリカでは、余剰穀物を持て余していたのです。この余剰穀物を利用して、20世紀半ばから、「畜産革命」大量肥育法が始まります。フィードロット法による肉牛の大規模生産が始まりました。広大な敷地をコンクリートと鉄柵で仕切り、各区画に一定数の牛を収容してとうもろこしを主体とした配合飼料を与えて肥育するものです。
産地でと畜、解体まで一貫して行い、冷蔵、冷凍車で消費地に配送するシステムなんですね。
生産品を早く市場にだせ!
いわゆる牛が「霜降り」肉を作る時期は、急速な筋肉の成長が遅くなってからなのです。
早い段階の赤肉の状態で売れるということは、生産者にとっては生産品を早く市場にだせるためにとても「ありがいこと」だったのですね。
「な〜んだ、生産者の都合も入ってるか」、、、と感じますね。
上記のような理由が関連して、「最高級牛肉の霜降り肉の脂肪量」は、2回にわたって引き下げられたのです。それは、1965年と1975年です。僕が米国に留学していた80年代後半はすでに脂肪の多すぎる「霜降り」肉は等級を下げられた後だったのです(だから安かった、笑)。
日本での牛肉格付け
日本にも牛肉の格付けはあります。日本での牛肉の等級は、A5、A4、B5のように「アルファベット+数字」の形で表記されるのですよ。学校の成績みたいですね。日本食肉格付協会が農林水産省から承認を得て格付けをしています。
アルファベットの部分
アルファベットの部分は歩留(ぶどまり)等級といいます。これは「その牛からどのくらい商品となる牛肉が取れるのか」を評価するもので、AからCの3段階があり、Aが最高ランクです。これは生産性への評価とも言えますね。
数字の部分
そして、数字の部分は肉質等級といい、これは「牛肉の色沢」「牛肉の締まりときめ」「脂肪の色沢と質」「脂肪交雑(脂肪の入り具合)」の4つを総合的に評価したランクです。1から5の5段階があり、5が最高ランクです。この4つの項目にそれぞれランク付けをします。そして、中で最も低い項目のランクが、その牛肉の最終的な肉質等級となります。
ひとつの例
- 「牛肉の色沢」5
- 「牛肉の締まりときめ」4
- 「脂肪の色沢と質」4
- 「脂肪交雑(脂肪の入り具合)」3
この場合、評価は一番低い数字のもの、つまり「3」となるのです。
日本のスーパーなどの表示
食品表示法により、小売店での肉の内容の表示は決まっています。対面で軽量販売する場合と、スーパーなどでパックに入ったものを売る場合は表示が違います。スーパーのパックの表示は、以下のように定まれています。
- 量目(入っている重量)
- 販売価格
- 消費期限
- 加工場(包装した場所)の名称
- 加工場(包装した場所)の所在地
日本独自の牛肉の等級の決め方(アルファベット+数字)があるのですが、それは表示されていません。消費者が賢く見定めないといけないですね。小売店で計量販売されているものは、店員から説明を受けられる機会があるので聞いてみるのもいいと思います。
僕の意見ですが
食肉においても他の食品でも、「おいしさ」は消費者ひとりひとりの嗜好性によります。つまり、「人それぞれ」なんですね。なので、等級によって「この牛肉はおいしい」と保証はできるかというと、できません。しかし、おいしさに関わる脂肪率などを評価しているので、一定のおいしさの基準にはなるかなと思います。等級は業者間の基準にはとても有効性があるとはいえ、消費者にとっては自分でどのような肉を買うか判断するしかないかな、と思うのです。(それを言っちゃあ、お終いだよ、的な結論ですみません)
最後に、なんといってもサーロイン
いろいろな評価の方法がある牛肉ですが、美味しいステーキの代表的なものは皮下脂肪とサシと赤身をバランスよく味わえる肉「サーロイン」でしょう。
ヘンリー8世というイギリス国教会を作った王がいます。(ちなみにカトリックの教えに背き離婚したいがために独自の教会を作りました。この人6回結婚してます。)。ヘンリー8世は食べた牛肉に対して、あまりの美味しさに「この肉(腰肉:ロイン)に『サー(Sir)』の称号を与える」と言ったのが始まりと言われています。 サー(Sir)・ロイン(腰肉)、王が認めた高貴な肉なのです。
この時期、つまり宗教革命後にイギリスは食肉に関して大きな変化をしています。その肉に含まれていた脂肪量はどのくらいだったでしょうね。
肉に対する嗜好性も時代により変わりますね。いろいろな歴史に想いを馳せて牛肉を食べるのもいいですね。