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卵のピクルス
今のような品種改良される前の鶏は限られた時期しか卵を産みませんでした。春になると産卵を始め、それが夏中続きます。産卵は秋には終わるものでした。それゆえに、卵も野菜と同じで、一年中食べられないか保存方法が考えられました。多くの方法は、もとの卵のまま、空気を遮断するものです。石灰、もしくは水酸化性カルシウムの飽和水、が使われました。アルカリ性が強いので細菌が繁殖しにくいものです。その上、殻が炭酸カルシウムの薄い層で覆われます。それによって殻の細孔を塞ぐことができるのです。これで空気を遮断することになります。
亜麻仁を塗る方法がありました。１８００年頃のオランダで始まったと言われています。２０世紀の初頭には水ガラス（ケイ酸ナトリウム溶液）が使われました。これには抗菌作用と、細孔を塞ぐ効用がありました。
これらの方法は、現在、年間を通じて鶏が卵を生むようになったこと。そして、冷蔵技術で必要ないものとなっています。
中国の保存卵
平均的な中国人は、平均的なアメリカ人に比べて卵の消費量は３分の１です。中国人はよくアヒルの卵で貯蔵卵を作ります。鶏の卵は、タンパク質や膜が貯蔵卵に向かないためもあります。貯蔵卵はアヒルの多い中国南部の省が発祥の地です。
鹹蛋（シェンタン）
僕の作った鹹蛋
保存卵で最も簡単なのは、塩漬け卵です。３５%の塩水に卵（アヒルの卵、殻付き）を漬けます。（シルクロードの方ではアヒルが少ないために鶏の卵で作ると聞いたことがあります。）または、塩、水、泥、をペースト状にして混ぜて、表面に塗る方法です。２０から３０日経過すると、それ以上塩分は卵に染み込まない状態になります。卵白は液状、卵黄は固体化します。これは、高濃度に存在する正電荷のナトリウムと負電荷の塩素は、卵白のタンパク質がお互いに近づくのを防ぐためです。卵黄のタンパク質粒子は固体化します。「鹹蛋」は茹でで食べるのが一般的です。日本では鶏の卵で作り、卵かけご飯で食べる人もいるようです。
皮蛋（ピータン）
戦前、満洲、つまり今の中国東北部で育った僕の母は、ピータンが好きで、我が家ではよくピータンが食卓に上がりました。これは、「千年卵」とも呼ばれています。
成熟期間：１～６ヶ月
保存期間：１年
「千年卵」という名前は、その外見から来ています。いかにも古い化石のような物体に見えますね。泥に覆われた殻は、まるで遺跡の中から取り出してきたみたいです。褐色の卵白も古そうです。卵黄も褐色で固形化されていて古そう。独特な香りがあります。アルカリ臭、硫黄臭、アンモニア臭、などです。
二つの要素が作るピータン
ピータンを作るには二つの要素が必要です。一つは「塩」。もう一つは「強アルカリ」です。アルカリは、木炭、炭酸ナトリウム、苛性アルカリ（水酸化ナトリウム）、またはこれらの組み合わせで作ります。香りづけにお茶を使うこともあります。泥を混ぜてペースト状にして、乾燥させて硬い保護外皮として使うこともあります。つけ汁の材料で、卵を漬けることもありますが、アルカリ臭が粗い感じになります。
透明度と色合いなど
卵のpHは９前後です。すでにアルカリ性なんですね。それを１２まで徐々に上げていきます。この化学的ストレスが無機的な発酵過程というものを生み出すのです。
注意しなければいけないのは、製造時間を早めるために有毒添加物を使っている場合があることです。それは、工業用の硫酸銅です。「硫酸銅含まない」または、「酸化銅を含まない」という表示のものを購入しましょう。以前にも事件になったことがあります。
ピータンの誕生
様々な伝説がありますが、広く知られているのはピータンが偶然にしてできたというものです。しかし、美味しいと分かったにしろ、最初にあの色の卵を食べた人はかなり勇気がありますね。
中華民国初期袁世凱の死後、ピータンは軍用食として缶詰などに使われていましたということです。この時期のピータンとしては湖南省益陽県のものが一番多かったと記録されています。
最も気持ち悪い食品？
２０１１年、CNN（アメリカのニュースチャンネル）の記者がピータンを「最も気持ち悪い食べもの」のトップに選びました。中国人でも気持ち悪がられている、「ネズミジャーキー」や、「孵化しかけの有精卵」を抜いて堂々一位です。（多分その記者は中国本場の筋金入りの気持ちわるい食べ物を知らないと思います。） 中国の最大のタマゴ加工製品会社、湖北神丹健康食品有限公司が抗議して、物議を醸したそうですよ。
僕はそれを聞いて「最も気持ち悪い食べもの」が「納豆」でなくてほっとしました。以前、アメリカに住み始めた頃「発酵した大豆（fermented soybeans)」という言葉がなかなか出てこなかったことがあります。しかたなく友人に、腐った大豆(rotten soybeans)と使ったら、「かなりキモい」と言われました。それはそうですよね。
最後に
ピータンは好き嫌いがだいぶ分かれると思います。
／／僕は好きです／／
こちらもご覧ください。卵が完全食と言われる理由を書いています。
