今回作った「ほうれん草のお浸し」/器は萩焼/酒器は丹羽立杭焼/お盆は京漆匠「象彦」
「お浸し」とは浸すお料理の事です。
誰でも簡単に作っているお料理ですが、本当に美味しく作るには色々とコツがあります。
美味しいお出汁にやさしいお味を付けた浸し地、そこにほうれん草をじっくり浸す事で中まで十分味が滲みて美味しくなりますよ。
浸す時間はかかりますが、放っておけば勝手に味が入るので手間はかかりません。
どうせ食べるなら美味しく作りたいですよね。
Contents
なんでうまくいかないの!?
ほうれん草が水っぽい、またはしょっぱい
茹でたほうれん草にお醤油をかけただけの物を、お浸しと呼ぶことがあるようです。これでは、口に入れた瞬間はしょっぱいけど、噛んでみるとほうれん草の中から水が出てきて水っぽい味になった、という事になってしまいます。
ほうれん草の中までしっかり味が染みていないのですね。
ほうれん草を茹でたあとはしっかり絞って水気を切って、それからじっくり浸し地に浸しましょう。
もっと丁寧にする時は、少量のつけ地にサッと浸けて絞った後(仮漬け)改めて漬けなおし(本漬け)ます。
また、出汁が薄いと水っぽく感じますので、濃いめの出汁を使ったほうがより美味しく仕上がります。
ほうれん草がえぐい
野菜にはアクがありますね。
野菜の立場からすると、動物や虫に食べられたくないので、エグ〜いアクを付けておいて、「私ってまずいのよー、食べない方がいいわよー、」とアピールしておかないと、みんな食べられてしまって生き延びる事ができません。
それゆえに一生懸命アクを身にまとって外敵を寄せ付けないようにしているのですね。
アクも味のうちなので、取り過ぎてもいけませんが、適度にアクを落とす事で、その食材本来の美味しさが私たちの味覚にダイレクトに届き、アクに邪魔されずに味わうことができるのです。
ほうれん草は「シュウ酸」というアクを持っています。
季節や産地などによってシュウ酸の量は違いますが、いずれにしてもせっかくの美味しさをじゃましてしまうので取り除いておきましょう。
シュウ酸は水溶性なのでたっぷりのお湯で茹でた後、水に晒すと殆ど気にならなくなりますよ。茹でる時はシュウ酸を揮発させるため、蓋をしないでくださいね(ポイント!)。
ほうれん草の色がキレイにならない
ほうれん草の緑色はクロロフィルです。クロロフィルは加熱によって褐変するので加熱時間が長いと褐色になっていきます。加熱時間を短くするには湯温が下がらないよう、お湯の量を多くする事と強火にすることが大切です。
また、茹で上がったらすぐに冷水に落として冷まし、色の変化を止めてください。
ほうれん草がくたくたになってしまう
野菜はどんなに新鮮なものでも、買って来た時点でもう既に水分が抜けています。
多少しんなりしていても「どうせ茹でるんだから一緒でしょ!」なんて思わないでくださいね。
パリッと水で戻したお野菜は、茹でた後の食感が全く違います。ほうれん草を使う前には必ず水で戻してシャキシャキ食感のお浸しを作ってくださいね。
ほうれん草は、すぐに火が通るので茹で過ぎも禁物です。
まずは茎の部分を30秒茹で、全体をお湯に沈めてさらに30秒ほど茹でれば充分です。(加熱時間は、ほうれん草の状態によって加減してくださいね)
砂が残ってジャリジャリしてしまう
ほうれん草の根元には砂が残っていることが多いです。
そして、その砂の中には土壌細菌が含まれていて、加熱しても殺菌できないものもあり、人体に有害です。
根元に切り込みを入れたりされることが多いと思いますが、これでは十分に砂を落とすことができません。
根元を少し切り落として、茎をバラバラにしなくては砂は完全には落ちないのです。
ため水に漬けて泥を溶かしてから洗うときれいに落とすことができます。
この時、茎の部分を輪ゴムで縛っておくとバラバラにならずに扱いやすいのでオススメします。
材料
ほうれん草:一束
浸し地
- 出汁:600cc
- 塩:小さじ2/3
- 薄口醤油:10cc
- みりん:10cc
天盛り
鰹節:適量
準備
ほうれん草
根本を切り落として茎をバラバラにする
茎の部分を輪ゴムで縛る
ため水で洗う
根本の泥を丁寧に落とす
水に浸けてパリッと戻す
(表面が乾かないように濡布巾をかぶせておく)
浸し地
合わせて冷ましておく
作り方
1)たっぷりのお湯を沸かす
2)色を安定させるためと、下味用の塩(お湯の1%くらい)を加える
3)ほうれん草の根元をお湯に入れ30秒ほど茹でた後全体を沈める
4)途中でいちどひっくり返し30秒ほど茹でる
5)冷水に落として急冷する
6)根元の方から順番にやさしく、しっかり絞る
この時に巻き簀を使うとやりやすいです
7)仮付け用の浸し地に20分ほどつける
8)しっかり絞る
9)本漬け用の浸し地に2時間ほどつける
10)空気を抜いてラップをかぶせると均等に浸かります
11)食べやすい長さに切る
12)器に盛り付けて、浸し地を張る
13)鰹節を天に盛る
天盛りは切りごまや柚子などでもお好みのものをのせてください
アドバイス
ほうれん草によってえぐみの量が違うので味見をしながら水にさらす時間を加減してください。
つけ時間が少ない時は浸し地の塩の量を少し増やすと早く味が入ります。
お出汁は濃い目のしっかりしたものを使うと塩分が少なくても美味しいのです。これが正しい薄味ですね。出汁も効いてない、塩も少ないでは、ただの水っぽい味になりますよね。
ほうれん草以外でも水菜、小松菜、青梗菜(ちんげんさい)などお好みの野菜で楽しんでください。
また、ほぐした魚の身や、ちりめんじゃこなど、旨味のある物を一緒に浸すと、さらにおいしくなりますよ。
器に合わせていろいろな盛り付けを工夫してみてください。
俵型に盛り付けました。
以下、杉盛りです。これは小鉢に和え物や酢の物を盛るときの基本の形で、山型にうず高く盛りつけ、杉形(すぎなり)に盛るという意味があります。
完成です!
器は作者不明/酒器は丹羽立杭焼・海老徳利/お盆は京漆匠「象彦」