メイラード反応をご存知ですか。
よく「肉汁が逃げないように肉の表面を焼き付ける」と思っておられる人が多いです。でも、これはマチガイなのです。
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メイラード反応|常識のマチガイ
肉汁は逃げます!
間違っていたのですが、この考えは、さかのぼること1850年、ドイツ(正確にはヘッセン大公国。ドイツの統一前だったから)の高名な科学者、ユリトゥス・フォン・リービッヒ男爵により考え出されました。
その何十年か後に、この「肉汁を逃さないために」の考えは否定されましたが、今でも、多くの人、プロの料理人でも信じている人が多いのですよ。
リービッヒ男爵以前の調理法
古くは肉の調理法は大きく二つの方法がありました。
- ある程度火から離してローストする
- 紙に油を塗り、その紙で包んでローストする
上記の後に、仕上げに表面をさっと焼き色をつけていました。肉汁が流れ出るということは気にしていなかったようです。
リービッヒ男爵の考え
男爵は、肉に含まれる水溶性成分、つまり肉汁が大事だ!と思い立ったわけです。これは栄養ではないかという考えです。できるだけ、肉汁を失わないように、素早く加熱し、焼き目で殻を作ってしまったらいいと主張しました。そして、その肉は煮込むときも外側からの水分が入ってこない、とも考えました。
リービッヒ男爵の考えのまとめ
リービッヒ男爵の考えが正しかったら、肉の焼き目の殻が守り、煮込み中に外から水が染み込むことが防げるわけです。加えて、ローストするのであればその焼き目の殻がロースト中の肉から肉汁が出るのを防げるわけです。
それ故に、最初に肉の外側に焼き目をつけ、その後に、低温で焼けばいいじゃないかという考えに至りました。
メイラード反応を使って反論
上記、リービッヒ男爵の考えに反論したのが、フランスの有名な料理人、オーギュスト・エスコフィエです。
1930年代にエスコフィエが実験した結果、リービッヒ男爵の考えはマチガイだったことがわかったのです。肉を高温で焼くときに「ジュージュー」音がするのは、水分が染み出して蒸発し続けるからなんです。この水分が抜けるのは、焼く温度に影響されます。高温だと、たくさん水分が抜けて、肉の表面は乾燥します。
メイラード反応のために焼き目を入れる
焼き目を入れることで、肉の表面に褐変反応が起こります。メイラード反応の一つです。それが、風味を増し、唾液を促進するのです。肉汁を閉じ込めるというリービッヒ男爵の考えはマチガイでしたが、「風味を増す」という効果はあったので、リービッヒ男爵の方法も違う意味で正しかったわけです。