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それはノリといって食べる海藻ですよ
「この黒い紙みたいなものはなんですか?」
関西空港からヨーロッパに行くために、ルフトハンザドイツ航空に乗っていた時のことです。となりに座っていたドイツ人の男性から不思議そうな顔で英語で聞かれました。彼の機内食には日本便らしく蕎麦が提供されていました。そしてその蕎麦の横に、彼にとっては「黒い紙」のようなノリが細く切って添えられていたのです。
「それはノリと言って Seaweed ですよ」と答えると、「ヘ〜」という感じで納得していました。日本滞在中に寿司屋などの和食の店にいかなかったのでしょうか。
日本では誰でも馴染みのある海藻ですが、英語では Weed (雑草)ですからね。食用という感じではなかったのでしょう。
「海藻」とは、海洋性植物を広く総称する言葉です。つまり、海の中の植物すべてが「海藻」ですね。陸上にある食用の植物も含めた全ての植物は海藻を祖先とします。つまり毎年、花粉の時期に僕を悩ませている杉も、よく食べるキャベツやその他の食用野菜も全て「海藻」が祖先なんですね。
「海藻」にはなんと2万種類以上のものがあるのですよ。その中で食用にしているのは、数百種類です。
\関西で大人気大江のり、僕も好きです/
海藻を食用とする主な地域は
- イギリス諸島
- アイスランド
- ハワイ
- 南米(ウルグアイなど)
- アジアの沿岸地帯
調べてみると、イギリス諸島など意外でした。陸上食用植物があまりないところでは海藻は食用として重要だったらしいです。
各国の海藻の使い方
イギリス諸島での海藻の使い方
ダルスという海藻を食べます。ダルスはイギリス諸島のアイルランド、そしてカナダなどでは「海のパセリ」と呼ばれ、タンパク質、ビタミン群、ミネラルなどの栄養成分を豊富に含んだ貴重な食材として親しまれています。また、その高い栄養機能性から、サプリメントの素材としても高い人気を誇っています。
油で揚げて、ベーコンのような感じに仕上げてスナックとして食べます。または、ドライローストにしてサラダのトッピングにも使われています。
そしてこれらの地域ではダルスは古来、食用や薬用として重宝されていました。
このダルスに関しては、なんとスコットランド西方海上に浮かぶインナー・ヘブリディーズ諸島のアイオナ島にあった中世ケルト教会のアイオナ修道院の修道僧が収穫した記録が残っているのですよ。
古くから食用にしていたのですね。
アメリカでの海藻の使い方
北欧産の「ダルス」は、アメリカで注目を浴びています。
上記ダルスを品種改良して、焼くと強いベーコン風味になるものを作ったらしいです。
オレゴン州立大学のハットフィールド海洋科学研究センターで水産学を教えるクリス・ラングドン教授は、通常よりも速く確実に成長する新種のダルス「C3」を開発し特許を取得した。プレスリリースの中でラングドン教授は、C3は「これまでに報告されていた速度を上回る」早さで、ダルスを育てることができると述べている。
この海藻は、紅藻の一種「ダルス」の新たな品種として同大学の海洋科学センターのチームが開発した。
同州の最大都市ポートランドにあるレストランや大学付属の食物研究所が、この品種を使ったさまざまな料理を試す中で、焼くとベーコン味になることが分かった。
チームを率いるクリス・ラングドン氏は学内新聞とのインタビューで「フライパンで焼くと海藻ではなく、ベーコンの味がする。かなり強い風味だ」と語った。
ダルスにはもともとミネラルやビタミン、抗酸化物質、タンパク質などが豊富に含まれている。研究者の1人によれば、健康に良いとされる野菜「ケール」の2倍の栄養価を持つ「スーパーフード」だという。
ダルスのサンドイッチ/レシピ(食べかたの例)
- ダルスをフライパンで中火で数分間、葉が緑がかるまで(黒まで煎ると焦げます!)まで乾煎りします。冷まします。
- その間に、パン(お好みで)をトーストし、トマトをスライスします。パンにベジネーズ(vegenaise)を塗ります。ダルス、レタス、トマトをのせます。必要に応じて、塩とコショウで味付けします。
ベジタリアンに人気があるようですね。そのためにベジネーズ(vegenaise)をこのレシピでは使っています。日本では「ベジタブルネーズ」と呼ばれることが多いようです。卵不使用なので、卵アレルギーの方にも美味しく食べられるのがいいですね!
ベジネーズは卵不使用で作られている、ヴィーガン対応のマヨネーズです。
イタリアでの海藻の使い方
イタリア・ナポリ料理に「ゼッポリーネ」というものがあります。ピザ生地に海藻を混ぜて揚げたものなんですよ。外はカリッとして中はモチモチとした食感だそうです。
イタリア全体に海藻を使った料理はほとんどないのですが、この「ゼッポリーネ」はナポリ独特の珍しいものです。これは日本人の口にもあいそうですね。磯の香りがしそうです。
海藻の入った小さな揚げパンという感じでしょうか。
ハワイでの海藻の使い方
ハワイ語で海藻のことを「リム」と言います。その中でも、「オゴ」と呼ばれる海藻はポピュラーらしく、サラダの中に入っていたりします。これは日本語の「おごのり」からきているのだそうですよ。
この「オゴ」はハワイ料理、「ポケ」には欠かせないものです。この料理は、刺身の盛り合わせに塩をして、この「オゴ」を散らすようですね。
調べたら、海鮮丼のようにご飯の上に具を乗せて食べることが多いようです。
ウルグアイでの海藻の使い方
ウルグアイでは「わかめ」や「アオサ」を獲って食べる習慣があるようです。なんと、フリッターにして食べるとか。
南米版、磯辺揚げという感じですね。お酒のおつまみに今度作りたくなりました。
アジア諸国での海藻の使い方
台湾での海藻の使い方
台湾では、基本的に生野菜はあまり食べないのですが、「涼拌海帶(リィァン パァン ハイダイ)」という昆布やワカメの和え物があります。
美味しそうですね。僕の見た感想では、日本文化の影響を感じるのですが、どうでしょう。ご存知の方はお教えください。
インドネシアでの海藻の使い方
バリ島には、Rujak Bulung(ルジャック・ブルン)という「新鮮な海藻」という意味の海藻料理があります。ナッツなどを乗せて食べるみたいですね。「若いココナッツと好みに応じた辛さのレベルのチリソースをすりおろしたものと混ぜ合わせ、ピンダンソースをかける」とインドネシア語のレシピに書いてありました。ピンダンソースとは魚の甘辛ソースのことのようです。美味しそうですね。
バリ島に行ったことはあるのですが、この料理は記憶にありません。残念。
日本の海藻食
四方を海で囲まれている国土に住む日本人と海藻の歴史は長いです。1000年以上もの長い間、日本では料理の出汁をとるのに昆布を使ってきました。
そして、701年の大宝律令には、現在の税金と同じ意味の「調」の中に海藻を見つけることができます。29種類の海産物が租税として納められていましたが、そのうち8種類が海藻でした。
その中の海苔は特に日本人に馴染み深く、なんと最近の研究では、海苔を消化する分解酵素を作る遺伝子が日本人しかないという研究もあったくらいです。
近年、イギリスの医学雑誌に、日本人の腸が海草に含まれる多糖類を分解できるのは、分解酵素を作る遺伝子を、腸内に住む細菌が海洋性の微生物から取り込んでいるためだとする論文が発表されました。バクテロイデス・プレビウスという腸内細菌が、同じ酵素を作る遺伝子を持っていることがわかったのです。このバクテリアはこれまで、日本人からしか見つかっていないようです。
かつて日本人は海苔を焼かずに食べていたため、海草に付着していたバクテリアからこの遺伝子が取り込まれたものと考えられています。
日本が発見した寒天の製法
ところてんと寒天
ところてんも寒天も、原材料は同じです。その材料は、天草やオゴノリです。
ところてん
寒天
ところてんと寒天の違いは製法です。
- ところてん:天日干しにした天草をお湯で煮溶かす/冷やして固める
- 寒天:一度作ったところてんを凍らせて乾燥させたもの
ところてんの歴史
ところてんは中国から伝わりました。その年代は諸説あります。よく知られているものには、仏教伝来の頃(538年)中国から精進料理の伝承に伴ってこんにゃくと共にその製法が伝えられたと考えられています。
寒天の歴史
江戸時代1660年頃、冬、京都伏見の宿で参勤交代で宿泊した薩摩藩19代藩主・島津光久に供したトコロテンの残りを屋外に捨てておいたところ、数日後にはそ れが白い乾物になっていたそうです。
島津光久
それを発見した宿主の美濃屋太郎左衛門は、不思議に思って水で煮てみました。それが溶け出し、冷ますとまたトコロテンに戻ったところから製法を思いついたそうです。これが現在の寒天の起こりで、当時は瓊油(たまあぶら)の干物として売られていたそうです。
以上、海藻を食べる国々の話題でした。
関西に住んで知った「大江のり」
よく淡路島に行くのですが、物産品でよくお客さんが「あ!大江のり、あるときに買っとこう!」とよく購入していて気になっていました。関西では、美味しさで有名です。