魚も出世する
昔の人は地位が変わるとどんどん改名しました。豊臣秀吉などはそのいい例です。「日吉丸」「木下藤吉郎」「羽柴秀吉」「豊臣秀吉」「豊太閤」。「出世」すると名前も変わったものです。魚も名前が変わる品種がいます。いわゆる「出世魚」。ブリなどはその典型です。秀吉に習うと「ワカナ(日吉丸)」、「ツバス(木下藤吉郎)」、「ハマチ(羽柴秀吉)」、「メジロ(豊臣秀吉)」、「ブリ(豊太閤)」です! いやあ、出世街道まっしぐらですね。スーパーで売られている切り身、ブリ一切れ400円。などと書いてあるのに、筆者は釣り師なので「え~これは違う!ハマチ じゃないか。」と見破ることがあります。ただのカンですが、その辺りは曖昧ですね。
消費者庁によると
「成長段階に応じた名称(成長名)や季節に応じた名称(季節名)がある魚介類については、成長名や季節名がその内容を表すものとして一般に理解されるものである場合は、それらの名称を表示することができます。」
う~ん、なんだかビミョウ。「一般に理解」? 僕の周りには、ハマチとブリが違う魚って思ってる人多いですけど。。。
関東と関西の違い(消費者庁のサイトより)
ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ(東京)
ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ(大阪)
これがまたメンドーな状況を作ってます。関西に住む筆者は関西風の呼称に慣れているため、関東のスーパーなんかで「ワラサ」を見てもピンとこず、「サワラ」と読み間違えて買ってしまったこともあるくらいです。「サワラじゃない!」口に入れた途端にわかりました。「セビリア」行きの飛行機と思って乗ったのに、「セルビア」に着いたくらいの驚きです。でも、これはホンの一例です。各地方で無数に呼び方があります。
ちなみに寒ブリで有名な富山での呼び方は、、、、、。
スバイソ ー フクラギ ー ガンド ー ブリ
ブリは日本の広範囲で獲れますので、本当に様々な呼び方がありますね。
ブリの語源
語源には諸説ありますが、武井周作の大作「魚鑑」(うおかがみ)に、「唐韻(唐の時代に作られた発音の書)にいふ鰤(し)は老魚なり。鰤(し)の字ぶりと訓す」とあります。
「鰤」という字は日本でつくられた字です。上記のように中国で魚師というのは大魚,老魚の意で,これから鰤の字をつくってあてたらしいのです。漢和辞典によっては、中国では「鰤」は毒魚と書いてあるものもあります。
ブリの名は古い日本の記録には見られません。《和名抄》に波里万知(ハリマチ)の名で出てくるのが初めで,これがつまって室町期にハマチとなり,同時にブリの名も現れるということです。
「ぶり」は大型になると脂が多く、死んでも(老魚)あまり早く死後硬直しない。だから手に持って「ぶらぶら」するために「ぶら」がブリに転訛したもの、ではないかと思われます。他には、「大言海」にあぶらの転訛であり、脂肪の多いことから「あぶら」→「ぶら」→「ぶり」との表記があります。
ブリの養殖
ブリ養殖量日本一の県は「鹿児島県」です。温暖な気候と海水温に恵まれた温暖な気候がブリの養殖にとてもいい環境です。これは僕の出身地でもあり、周りにもブリの関係者がいます。現に出身高校の同級生にブリの養殖業の人の人もいれば、よく釣りでお世話になる釣りイカダの経営者「丸正水産」の社長さん(ブリなど養殖をしている)など知り合いです。(社長さん、ピアノも弾いてクラシックファンです。)
鮮度のいいブリ
たくさんスーパーに並んでいるブリの切り身の中から鮮度の良いものを見つける方法はあります。それは、「血合い」つまり黒ずんだ赤みの部分に着目することです。鮮度の良いものは赤い綺麗な色をしています。古くなるとこれが黄色味を帯びてくるのです。脂が入っているブリを見分けるには、脂の筋が切り身に走っているか、皮目(皮と身の間)に脂が乗っているものがいいです。筆者は脂の乗った部分が好きなので、「腹身」を好んで買いますが、なぜか僕の行くスーパーなどには「腹身」が残っていることがあるのが不思議です。多分、油分をあまり取らないようにする健康志向の人がいて「腹身、脂、イコール太る」と思っている人が多いのだと思います。実際には糖質を取ることの方が太るので、あまり気にすることはないと思いますが。栄養素で言っても、ブリ100gにはEPAが約900㎎、DHAは約1,800㎎と豊富に含まれているそうです。EPA・DHAの目標摂取量は1日1000㎎ですから、ブリ1切れで達成できますね!
農林水産省によると
2016(平成28)年から2018(平成30)年の平均で年間1人あたりの魚介類の家計消費量を魚種別にみると、
「サケ」が最も多く2,579グラム、「まぐろ」2,104グラム、「ぶり」1,775グラム、「エビ」1,359グラム、「イカ」1,319グラムとなっています。
10年前に比べると、全体的に魚介類の消費量が増えています。
ブリは第4位ですね。
総務省によると
ブリに消費する金額のランキング(2人以上の世帯での年間支出金額)です。
全国平均 3,244円
第1位 富山市(8,790円)
第2位 金沢市(7,611円)
第3位 福井市(5,031円)
北陸が多いですね。寒ブリの産地、ブリが好きなのは理解できます。
ブリの諺
寒鰤一本米一俵
いわゆる大きい「一斗鰤」のことです。「一斗鰤」とは、漁獲地の北陸・能登で、「米一斗」と「ブリ一尾」の値段がほぼ同値からの 由来からきています。それが山奥の飛騨にまで運ばれて来ると、米一俵 とブリ一尾(約12kg級)が同じ値段になるということです。ブリは高い というのが通り相場という話です。一俵は四斗に相当します。重さは60kgだそうです。
ブリ釣り
筆者の体験を書きます。前述した「丸正水産」の経営するイカダによく乗ります。イカダと言っても、マーク・トゥエン作の『トム・ソーヤーの冒険』に出てくるようなものではありません。平均8人くらいは乗って、トイレ付き、バーベキューもできたりします。つまり「大きい」。水深も30メータはありますので、ちょっとした船釣りと変わりません。(船のように移動はできませんが)。アジが釣れたらそれを餌にします。泳がせ釣りです。たまに、1メーターオーバーのブリがのってくる(針にかかる)ことがあり、8号のPEラインを切られたことがあります。うまく切られなく上手にやりとりできても、恐ろしい引き方で、長時間、魚との格闘になることは覚悟しないといけません。1匹釣れたら大満足で、あとは精神的に満たされて僕はお弁当食べたりしてゆっくりしたりします。青物の王者、ブリ釣りは楽しいです。