よく釣りに行きますが、どの釣り場にもユニークな人々がいます。
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犬と散歩の人々
散歩の人たちは釣り人とさほどコンタクトしません。「おはようございま〜す!」くらいなものです。そして朝が早い。大概の釣り師は朝が早いのですが、この釣り場ワンちゃん散歩の人たちもとても朝が早いです。
釣りは「朝まずめ」「夕まずめ」と、朝夕がよく釣れるのですが、ワンちゃんも朝、夕、散歩するのでよく出会うわけです。「まずめ」とは、日の出・日の入りの前後のことです。
自転車でくるおっちゃん
自転車のおっちゃんは、どの釣り場にもいます。ちょっと釣り場から遠方系の住民です。海の近くには住んではいないのだが、自転車で釣り場に向かい走ってきます。
もちろん、マウンテンバイクなどではありません。「ママチャリ」です。それも年代物の変速機なしのもので、甲高いブレーキ音が「キイイイィィィ」と漁港に響き渡ります。
「釣れてる〜?」などと、ほどよい運動が精神にもいいのか、気さくな人が多いです。
「今日は潮がダメやな〜」とか、「昨日はあの東側でよ〜けイワシが釣れとったよ」とか、毎日通っているだけあって日々の情報も持っています。
「ここはな〜、虫エサじゃないとダメ」とか、「チヌ釣るんなら、ここは落とし込みに限るで」とか、さすが、春夏秋冬、自転車で通っているだけに釣り方まで情報持っています。その情報も全て包み隠さず、教えてくれるところもこの手のおっちゃん、好感持てますね。
中には、「あそこのな、「救命胴衣着用するように」という看板の前の「命」という文字の前に立って、斜め45度左に投げると穴子が釣れるで」とか、根拠があるのか分りませんが、ものすごく細かく教えてくれるおっちゃんもいます。
でも、本人は釣りません。
外野席型おっちゃん
「おおっ!いい型や」とか、気がつくと背後から応援団みたいに呟くおっちゃんもいます。こういうおっちゃんは、挨拶もなく、浮遊霊のように近づき、気がついたらいなくなっているという人多いです。
コーチ型おっちゃん
この手のおっちゃんはためになり感謝の心が起こるおっちゃんと、うるさくて集中出来なくなるおっちゃんがいます。
ためになるおっちゃん
黙って後ろで見ている人が多く、時折「あのベテランはこうしていた」とか、いい情報をちょいちょいいいタイミングでくれるので、嬉しいです。大きな魚が釣れたりすると、玉網で釣り上げるのを手伝ってくれる感謝の奉仕精神も持っている人も多いです。
余計なこと言ってくるおっちゃん
問題はうるさいおっちゃんです。この手の人は「釣りしたいけど、できない(またはさせてもらえない)」のような気持ちが前面にオーラとして出ています。
釣り師の斜め左後方あたりに立ち、「あ〜、ハズレや。惜しかったなあ、今の大物やったで」とか、もう自分があたかも釣っているような奇妙な臨場感を常に持っています。
「またハズレた!今、アタリ(魚が針にかかって反応があったこと)あったのに、アワセ(アタリがあったら、竿をあげて魚の口に針を引っかけること)が遅かったんや!」とか、釣り人の心も熟知していて、今まさに心に思い悔やんでいる痛いところを突いてきたりします。
中には、釣り師のクーラーボックスを勝手に開けて「今晩は塩焼きで一杯、やっぱ酒は熱燗やな〜」とか、釣り終了後のことまで余計なチャチャを入れてくるので困ります。
エンターテイナー型おっちゃん
釣り師はあまりにも小さい魚だと、持って帰りません。(中には、こんな小さい魚、持って帰って水槽で飼うの?、みたいに小さい魚を持って帰る人もいたりします)
小さい魚は、海にリリースします。「大きくなって帰ってこいよ!」というのは多くの釣り師の決まり文句です。そして、その辺に投げておくと野良猫が持っていったりもします。
それなのに、その投げておいた小魚を使ってまるでショーみたいに楽しむおっちゃんもいるのです。僕の見たおっちゃんは、小魚を空中に高く投げ、飛んできたトンビに捕まえさせるというプチサーカスみたいな芸を披露していました。そして、周りの人に拍手までもらっているのです。
遠くからも「お〜すごい!」とか、「今は投げるタイミング早すぎた!」などと歓声があがるので釣りに集中できないのです。あれを、自分の真後ろでやられたらたまりません。そのトンビおじさんは、釣り師の後ろで、ひたすら野良猫と一緒に並んで小魚が釣れるのを待っているのです。それもたまりません。
何を言っているかさっぱりわからないおっちゃん
方言がかなりきつい。僕が理解していないと完全にわかるのに、ひたすら話し続けるおっちゃんがいます。高知でずっと早口の土佐弁で話しかけてくるのですが、さっぱりわからなく、ずっとこちらは困惑している顔なのに最後には満足げに帰っていく人がいました。
暇な警察官
これは徳島県でのことです。竹ヶ島というところで釣りをしていたら警官が遠くから寄ってくるではないですか。警官はひとしきり僕が次々と「アイゴ」を釣り上げるのを感心した様子で見て、無言で帰っていきました。
そして、次の日の朝も同じところで釣っていると、、、数人のおっちゃんが釣竿を持って現れました。「あんたか〜、神戸から来てアイゴをようけ釣っとるというんは」と言いながら、釣り座の準備しています。
その後、昨日の警官が現れて言ったのです。「あ〜この人たち、わしの同級生なんや。神戸の人がようけアイゴ釣っとるって電話したんや」と、前の晩に警官が同級生に釣り情報を連絡していたのでした。同級生らの「一緒に釣るか?」という警官への問いかけに、さすがに「本官は勤務中でありますから」と去っていきました。本心は「釣りしたい」ということがまざまざと表情に現れていました。
夫婦やファミリーでくる人たち
ファミリー釣りの人たちは、みな仲良い様子です。おじいさんが孫に釣りを教えたりと、微笑ましい情景もよく見られます。子供も楽しそうですよ。幼い頃に経験した魚釣りは大きくなっても心に残るものが多いでしょう。スーパーの切り身しか見たことない子供に比べれば、海からあがる魚の様子はそれこそ生物の授業です。魚の名前、生態、餌、などなど。大人も子供に教えるために学ばなければいけませんね。そして、自然からいただく命の大切さも学べます。
放課後にみんなで釣ってる小学生
宿毛市立大島小学校は宿毛湾と接しています。僕が見た光景は、放課後ズラーと友達同士で並び、釣り糸を垂らしているのです。これには感動しました。ゲームなどに興ずる子供が多い中、自然と触れながら友達と遊ぶ。ここだからできることだなと思います。
釣りガール
釣りガール1
最近釣り番組などで、「釣りガール」という言葉が使われだしたように、釣りをする女性も増えました。
かつて女性で釣る人は夫や子供と一緒ということが多かったのですが、近頃は女性が一人でロット(釣竿とは言わない)を持って海に現れることがあります。大概は、ルアーフィッシングで、ファッションもかっこいいです。そういう人はさっと来ていつの間にかいなくなります。おっちゃんと話してるのもあまり見たことありません。いわゆる女子会とかの感じで女性同士でワイワイなんてのもないです。
釣りガール2
おばちゃんが一人でくるパターン。「釣りガール1」とは大きく違い、かなりラフな格好です。小花柄ストレッチパンツみたいなものを履いて、釣竿を担ぎ、片手にバケツ持って現れます。海に来るのに農作業用日焼け止め帽子を被っているのも特徴です。これは完全な「オカズ釣り」です。サビキ 仕掛けで、釣る魚はアジ、イワシが多いです。周辺のベテラン釣り師とも仲良いみたいで、今晩の家族分の魚だけ釣るとさっさと帰っていきます。もちろん現れるのは夕飯前です。
釣り場でバッハ!?
ある日のことです。高知県の車を横付けできる漁港で釣っていた時のこと。「ピ〜ヒャラ〜」とリコーダーの音がすぐ背後で聞こえるではありませんか。「釣り場でリコーダー?」と不思議な雰囲気になりました。よく聞くとヨハン・セバスチャン・バッハのバイオリンのための無伴奏ソナタのフーガではありませんか。
それがそこそこ上手なんです。ミスもなく、淡々とフーガのテーマを一本のリコーダーで追って吹いていきます。僕はそこで、振り返りました。70代前半のおじさんでしょうか、髭をはやしていて、軽トラックの中で窓を閉めてクーラーをかけて演奏しています。
その後も僕の背後で、バッハの様々な曲でリコーダー用にアレンジしたものを次々に演奏していきました。遠目に見ると、小学生がよく学校で使うジャーマン式のリコーダーではなく、ちゃんとしたバロック式のリコーダーです。う〜ん、謎は深まるばかり。
かくして、僕はずっとバッハの演奏を背後に釣りをすることに、、、、。音楽家としては気になってしょうがないのですが、「何でバッハなんですか?」と聞きたい気持ちを抑えて釣ってました。そのうちに、そのおじさんは車から出てきてタバコを一服して、軽トラックで去っていきました。
たくさん釣れるのに持って帰らないおっちゃん
釣りって、魚が釣れたらおうちに持って帰って美味しく食べてるのだろうな、って思いますよね。僕はそうしています。
しかし、釣れても持って帰らない釣り師って意外にいるのです。どの釣り場にもいると言っても過言でないです。それもベテラン風の人に多い。
ついこの間、釣り座を片付けて、帰ろうとしてたら、遠くから「お〜いお〜い」と声をかけてくるおっちゃんがいました。近くに行くと「これ、いらないから持って帰って」とたくさんの魚をもらいました。こういうことは、年に何回もあります。エサも道具も買って早朝から釣ってるのに、釣った魚を持って帰らないのです。それもいい型の魚で、活き締めもしてあります(食べるための鮮度を保っているのです)。
「活き締め」ついては、別な投稿に書いてありますのでリンク先をご覧ください。
この時のポイントですが、「なんでですか?」とおっちゃんに聞かないことです。僕は釣りをはじめた頃は無邪気にも「なんでですか?」と聞いていました。好奇心を抱いたからです。
しかし、この質問を繰り返すうちに、この手のおっちゃんの答えは一つということを悟ったのです。
つまり曇った顔で、「持って帰っても嫁に嫌な顔されるだけや」という返事が必ずくるのです。ここで、家庭環境まで垣間見ることとなり、気まずい空気が流れます。「釣り師は魚を卸し、料理、片付けまでしないといけない」というのが僕の持論ですが、、、年配の人では「男子厨房に入らず」みたいな人がたくさんいます。したがって、この場は笑顔で「ありがとうございます」とそれ以上聞かないのがいいですね。
以上、釣り場で出会った人々の話でした。