新しいシリーズ、「お弁当」です。まず最初に取り上げるのは、新大阪駅で購入した水了軒の「京都 料亭菜膳(りょうていさいぜん)」。
和風のパッケージできれいですね。旅情をかきたてられます。カバーのデザインの書体(隷書ですね)、そして全体のデザインは洗練されていると感じます。余白の使い方が上手です。
データ
日時:2021年7月18日
購入場所:エキマルシェ新大阪
製造者:水了軒株式会社 大阪市淀川区野中北1丁目16番地
値段:1080円
簡単な評価:さっぱりしたものが欲しい人向け。いわゆるガッツリ食べたい人には向きません。お値段はちょっと高めですが、手間がかかっている味付けで納得できます。
水了軒
今回のお弁当の会社「水了軒」は、歴史のある会社のようです。
水了軒は創業の明治21年(1888年)から約120年、変遷する日本と共に歴史を刻みつつ、常に「手作りの味」にこだわり、より美味しいお弁当作りに情熱を注いできました。同時に長い道のりの結果生まれた「水了軒の味」を守りながらも、常に時代の変化に応じて新しいものもどんどん取り入れています。 その結果として今ある水了軒のお弁当には、美味しさがたくさん詰まっています。
水了軒の創業者である松塚孫三郎は、大阪曽根崎新地で「雲煙屋」という煙草の卸と小売りを営んでいましたが、大阪にまだ構内営業がなかったので、鉄道頭の井上勝より許可を受け営業を開始しました。時は明治21年(1888年)、東海道線は新橋=神戸間全通の前年のことでした。
当初は夏の間だけ駅構内の掘抜き井戸の冷たい水にハチミツを入れ「冷やしあめ」として販売していたことから、「水あめをう(了)る軒(みせ)」、「水了軒」と称しました。井戸水を使っていたことから「イゲタ」、創業者松塚の「マ」の字を入れたものが社章となっています。
実食!
総じて薄味で軽めのお弁当です。ほとんど動物性タンパクは入っていません。ほとんど植物性のもので作られています。
新大阪でこの弁当を購入して、東海道新幹線のちょうど京都あたりで食べました。新大阪から新幹線に乗り、約15分で京都ですから、お茶やお弁当を準備して「さあ、食べよう!」と思う頃、「京都〜。京都に到着します」とアナウンスが流れます。
内容の細かい評価
ご飯(国産米):冷たくても美味しく、口の中にお米の甘さが広がります。水了軒のHPを読むと、こだわりが感じられます。なるほど、と思いました。
お弁当の宿命である冷めたごはん。ごはんは炊きたてが一番おいしいのは分かっています。冷めたごはんを少しでもおいしく召し上っていただくため、水了軒ではお米を水に2時間ひたしてから炊いています。お米が十分に水を吸い、冷めても水分を保ったままのおいしいごはんにするための工夫です。また釜は50食炊き。大き過ぎるとどうしてもムラができ、おいしいごはんを提供できなくなります。
(当社では環境に配慮し無洗米を使用しております)
出汁巻玉子:出汁が効いていて「ザ・関西の味!」です。薄味で味わい深いです。
豆:薄味で上品な味です。
煮物
里芋:里芋は好きな食材です。上品に煮てあると感じました。
高野豆腐:ほのかに甘いです。それが高野豆腐の味を引き立てています。
ひじきと豆:これも薄味で上品。僕は普段豆はあまり好きではないのですが美味しく感じました。
椎茸:これはいわゆる京都でいう「炊いたん」です。つまり出汁で上手に炊いてあります。「炊いたん」とは、京都など主に関西地方で使われる料理名です。たっぷりのお出汁や煮汁でコトコト煮込んで素材に旨みを含ませる料理法なんですよ。
人参:これも「炊いたん」
麩(ふ):僕はお麩はあまり好きでないのですが、これはもちもちとして好きになりました。
小松菜の煮浸し:油揚げが乗っています。その油揚げと小松菜の組み合わせがとてもバランスよく感じました。出汁はきいています。
人参金平:人参の甘さの個性を金平の味付けが程よく包んでいます。
生酢:さっぱりとしています。人参と大根が織りなす、橙色と白のコントラストが美しいです。
さつまいも蜜煮:芋の甘さを大事に、それを消さないように蜜の味がコラボしています。
抹茶わらび餅:文句なく美味しいです。食後のお茶にぴったし。香り高い抹茶が口の中に広がります。これはデザートして完成していますね。
ちりめん山椒:これは、山椒の実とちりめんじゃこを炊き合わせたものです。京都のお弁当、という旅情を醸し出してくれます。
いんげん:出汁が染みていて、その上にパリッとして色もいいです。
香の物:香りがよく、ご飯が進みます。
総評
このお弁当は好き嫌いが分かれると思います。
魚(ジャコだけ)、肉、入っていないお弁当だからです。つまり「唐揚げ弁当」などとは対極にあります。
細かいことですが、割り箸、割りやすいです。全体に、食材の切り方、大きさなど、とても食べやすいです。
そして、動物性のものがあまりないからでしょうか、どの食材も口の中の後味がいいです。お麩は肉食を禁じられていた修行僧たちの貴重なたんぱく源として用いれられたそうです。そのお麩の存在がよかったです。お弁当の名前通り、京都の街並みを想像して食べると趣があると思います。
食べながら目を閉じると、大覚寺の紅葉が広がる、というような感じでしょうか。