「夏の蛤は犬も食わぬ」とは、夏のハマグリは味が落ちておいしくないことです。
そして、食い意地の張っている犬ですら、夏のハマグリは敬遠するということわざなんですよ。
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ハマグリとは
軟体動物門二枚貝綱マルスダレガイ目マルスダレガイ超科マルスダレガイ科ハマグリ亜科ハマグリ属
国内の内湾でとれる二枚貝の代表的なものです。書き方は以下のように何種類かあります。
- 蛤(こう):虫に合(こう:あわせてふさぐ)二枚貝の様子が想像できますね。
- 蚌(ぼう):蚌蛤(ぼうこう)という書き方もあります。または「蜯(ぼう)」とも書きます。
- 蛖(ほう:ぼう)
ちなみに、ハマグリの貝柱は「蛤柱」(こうちゅう」と言います。
生息域は
北海道南部以南の沿岸に生息しています。国内では激減しているのですよ。
青森県陸奥湾、東京湾東京都・千葉県、三河湾、伊勢湾、京都府宮津、大分県、熊本県などが産地です。市場の現状では、一般的なハマグリは九十九里などの地はま(チョウセンハマグリ)、台湾・中国などの輸入ものにとって代わられています!
夏は美味しくない貝類
貝類はアワビ・ホタテ貝をのぞいて、産卵期が晩春から夏の末ぐらいまでの間に集中しています。
この期間、味が落ちますし、ものによっては毒性をもつものもあるのですよ。初夏から夏には植物プランクトンが繁殖しやすくなるため、その時期に貝毒は多くなります。(すべての貝が毒を持つわけではなく、個体差・地域差・季節差が大きいとされています)
植物プランクトンの一種が作り出す毒を、貝が大量に食べることで毒が濃縮され、それを人間が食べることで貝毒の中毒が生じるのです。
貝毒の恐ろしさ
貝毒の症状には主に以下があります。
- 麻痺性貝毒
- 下痢性貝毒
- 神経性貝毒
- 記憶喪失性貝毒
日本では、1)と2)の発生が報告されています。
怖いのは、麻痺性貝毒です。一定量を摂取すると30分ほどで唇や舌、顔面のしびれや焼け付くような感じが表れ始めます。症状は徐々に首や手足の末端にも表れ、動くことが困難になるのです。 悪化するとよだれを垂らしたり、吐いたりといった症状が出て、最悪の場合、呼吸まひで死亡します。 死亡までだいたい12時間程度と言われています。
ほとんどの潮干狩りができる場所では、現地の漁協や水産研究所が貝毒の発生情報を発表しています。事前に問い合わせることが大事ですね。
貝の味が落ちる夏
カキなどは極端に味が落ちます。例外としてはアワビが秋から冬にかけて産卵するので、食べごろは6〜8月の夏ということになり、ホタテ貝は2〜3月が産卵期ですので、この時期をはずして食べることが多いです。
ハマグリは1年中出回っていますが、やはり、旬は、春の3、4月ごろですね。
蛤(ハマグリ)の語源
- ハマグリの語源は、アウマキ(味貝)の意味でキはクリの略という説
- アハセメアツクアリ(合目厚在)の意味との説
- ハマは浜、クリは石の意味 石が地中にあるのに似ているところからとの説
- ハマグリ(浜栗)の意味、浜にある栗に似たものであるからハマグリといったとの説
最後に書いた、浜にある栗に似たものというものが有力だそうですよ。
ハマグリにまつわる話
中国の「礼記(らいき)」に「爵大水に入り蛤となる」とありますが、爵は雀のことで、雀が海入ってハマグリになったという中国の話です。
ハマグリは殻を閉じるときの力の強さや殻頂(蝶番にあたる部分)の歯のかみ合わせが、他の同じ大きさの貝を持ってきても、絶対に合いません。そのことから、平安時代の「貝合わせ」(また「貝おおい」という)の遊びに使われてきました。これは、「源氏物語」にも書かれています。
そして、桃の節句に吸い物として用いられてきましたが、この季節がハマグリのもっともおいしい時季でもあったからですね。
ハマグリは割符(さいふ/わっぷ)にもしたことがあるのですよ。他の同じ大きさの貝を持ってきても、絶対に合わないことを利用したのですね。割符とは、木の札などに文句・文字などを書き、中央に証印を押し、これを二つに分けたものです。当事者どうしが別々に所有し、後日その半分ずつを合わせて正当な当事者であることの証拠としました。
他の同じ大きさの貝を持ってきても、絶対に合わないところから、二夫にまみえずという一夫一婦の教えともなって、結婚式の献立にハマグリの吸物が用いられました。
婚礼に用いることをすすめたのは徳川八代将軍吉宗です。
「蛤は吸うばかりだと母教へ」の川柳があるようにこの吸物はつゆを吸うだけでよいと言われました。
昔の人は
旧暦の3月3日は今の4月になりますね。
昔はハマグリをふくめた貝類の食べ納めが桃の節句だったのです。そして、再び食べ始める日を、仲秋の8月十五夜と定めていました。貝類は産卵の時期をすぎると、肉がやせて味も悪くなるので、そんな時にはできるだけ貝は採らないようにしていたのですよ。
内海のハマグリ、外海のハマグリ
ちょっと外見だけでは、どのハマグリもみな同じように見えますね。
それでも内湾のものと外海のものとでは、貝殻にちがいがハッキリ表れています。
湾内のハマグリはやや横に長く、貝殻が薄く、肉も柔らかなので食用には良品です。
外海のものは、波の荒いところに棲んでいるので、自然、貝殼もそれに抵抗できるように厚くなっています。そして、肉もやや堅く、形もほとんど不等辺三角形に近い形をしています。
東京の市場では東京湾内のものを「本場もの」と呼び、太平洋つまり外海に面したものを「場ちがい」などと呼んでいました。外海のものは、チョウセンハマグリのことと思われます。
ハマグリの調理法
ハマグリの調理法にはいろいろありますが、吸い物、焼きハマグリをはじめ、冬のハマグリ鍋、酒蒸し、ぬた、クリーム煮、時雨煮などなど、いずれも美味ですね。
ハマグリはヨーロッパではあまり食べられません。アメリカでは、クラム・チャウダーや、クリーム煮にしてよく食べます。
僕はボストンで、生Clam(クラム)を食べました。大きなハマグリですね。シーフードレストランで、生オイスター(牡蠣)と並び人気があるのですよ。レモンや山わさび、カクテルソースなどをつけて、食べます。とても美味しく感じました。